第32話 悠

あれから千葉先生とは顔を合わせてない。

結局、連絡先は登録しなかった。やっぱりできなかった。

今日は課題研究の日だから、当然顔を合わせることになる。

感情的にはすごく気まずい。

でも、授業の前に急いで移動して、一番乗りすれば聞きたいことが聞けるかも。

こんな時、気まずさより好奇心が勝つんだな、私って。

早足で、視聴覚室に急ぐ。


「先生」


いつものように早く来てた千葉先生がゆっくり振り向く。普段どおりの表情でちょっとホッとする。


「ん?」


「あの、伊東先生の手帳のことなんですけど」


千葉先生が眉をひそめる。


「なんでそんなことまで知ってるんだ。まだ見つかってないのか?警察でも聞かれたが何も知らないしもちろん持ってないから」


伊東先生の手帳、目黒先生のデマじゃなくてちゃんとあって、その上、本当に紛失してるんだ。驚き。

いったいどこにいったんだろう。

伊東先生が自ら衝動的に、突発的に死を選んだというのなら、どうして色々書き込んでたっていうその手帳が消えてしまったんだろう。

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