第21話 悠

自分の感情なんてふわふわしたぼんやりしたもので

この前痛感したように、わたしたちは先生のことなんてまるで何も知らない。

千葉先生のこと、遠くからあのおっきな身体を見つけて喜んだり、ちょっとした一言に舞い上がったり、その台詞を反芻してみたって、それは全然千葉先生本体とはあまり関係ない、独りよがりの感情だってこと。

だから当然彼女がいたり、そのうち知らない誰かと結婚して子供つくってパパになってっていう生身の人間ぽいルート歩んでいっても、わたしは全然関わることはないって、薄々というかまあわかってた、つもり。

つもりなんだけど、こんな形で知るなんてな。

これもわたしが伊東先生の死に納得できなくてあがいてる罰なのかな。


午後の授業は全く身に入らなくて、切り替えよう切り替えなきゃってしてみても、頭の中はぐっちゃぐちゃ。

別に、本気とかだったわけじゃないんだけどな。言い訳かな……


ああ、明日千葉先生の顔見るの嫌だな。でも、ここまで美冬が頑張ってあれこれ調べてくれてるんだから、任せっきりじゃなくて私が聞いてみないと駄目だよね。

気が重いな、なんで知りたがってしまったんだろう。なんで人の死の理由にこんな好奇心抱いてしまったんだろう。



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