第10話 透子

言うべきだったんだろうか。

伊東先生についてあたしが知ってること。

隠し事するつもりは全然なかったけど、あの場ではとっさに何も知らないって言ってしまって、嘘付いたみたいな嫌な気分。


厳密には嘘じゃない。

あたしは学校内の情報には本当に疎い。あの3人以外特に親しくしてる子もいないし。

でもね、学校外については……


とりあえず別に伊東先生の急死と関係があるって決まった話でもないし、

ただでも動揺してる悠を更に動揺させたくなかった。

この情報は多分、きっと誰にとっても無意味だ、多分。


6限が終わったらさっさと帰らないと、今日は6時から、鹿鳴館でバイト。

鹿鳴館なんて大層な名前だけど、うちの街でまあまあ有名な料亭で、

ここで配膳スタッフのバイトしてる。

まかないが豪華で美味しくて、女将さんも板さんも優しい。ここでバイトしてもう1年半近くになるかな。

黒糖プリンが絶品で、いつかみんなにも食べさせたいな。

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