実は超希少職【薬闘士】だった俺、国宝級パーティから追放されたのでエルフのぼっち聖女とともに生きることにした。
ひなうさ
第1話 陰湿なる王と自由になった男
「おめでとう〝アルバレスト〟の諸君! 今日から君達は晴れて我が国の国宝パーティとなる! ……ただしアディン=バレル、貴様を除いてな!」
国王が謁見の間で声を高々と張り上げた。
まるでダンスを踊るかのように手振り身振りで示しながら。
若く綺麗な顔付きで澄まし、ブロンドの髪を跳ね上げて。
そして俺が唖然としている中、国王はわざとらしく指先を向けて見下してくる。
「薬士……フンッ、底辺職が。薬を調合するだけしか能のない貴様がどうして最高峰パーティであるアルバレストなどに居付いているのかぁ~~~!」
俺たちが黙っているのを良いことに言いたい放題だ。
チラリと横を向けばフィルの奴が床に突いた拳を震わせている。
……すまない、俺のせいで。
「片腹痛ぁい! 身の程を知れぇ! 貴様のような奴がおこぼれで国宝級に仲間入りできると思うなよぉ~~~!?」
ついには国王の差す指が俺の伏せた頭を突く。
グリグリと擦り付けてくる辺りが性格を示しているかのようだよ……!
「おおっといけない。高貴な指先に底辺の汚れが付いてしまったぁ~~~消毒液をこちらに」
「ハッ!」
「クッ……!」
俺自身はこんなことを言われても一向に構わない。
だが仲間たちの我慢の限界がもう近い。
耐えてくれ、頼む!
「そんな訳だアディン。さっさとここから出ていけ。おっと絨毯を汚さんよう避けていきたまえよ」
「お言葉ですがミルコ国王陛下!」
「……何かな、フィル殿?」
ダメだ、もうフィルが止まらない。立ち上がってしまった。
お前はリーダーだろう!? 我慢できなくてどうする!?
「アディンは俺たちの要の一人です。彼を抜くことは我らアルバレストにとって大きな損失となり――」
「あーあーそういうのはいい。いらなぁい。友情だとかそういうので庇うのは君達の品質を落とすことになるのだから」
「グッ!?」
しかし国王にはまるで取り付く島もない。
そんなことは見てすぐわかるはずだろう!?
「国王陛下!」「進言が!」「取り消しを!」
「はいはい黙ろうか。君達の意見はそこまで重要じゃないんだ。君達は成果を残す。私はそれを讃える。ただそれだけでいい。そこに薬士なんてチンケな存在は必要ないだけなんだよ、オーケー?」
「ですが!?」
「安心したまえよ。これの後釜には私の嫁候補である賢者を一人付ける。回復も攻撃も可能なエキスパートだ。なかなかの上物だからと手を出すなよぉ?」
「ぐぐっ!」
そうだな、国宝パーティっていうのは基本的にそういうものなんだ。
国の象徴、王の代理戦隊、ギルドへの対抗策。
俺たちメンバーに主君へと意見する権利はほとんどない。
だから――
「みんな、やめてくれ」
「「「アディン……」」」
「彼らの非礼はすべて俺の至らなさに責任があります。ですからどうかご容赦を」
「フム……」
俺は国王に頭を付いて詫びた。
両手も肩もふかく落とし、全身全霊で謝罪の意を示して。
「いいだろう。お前の最後の願いくらいは聞いてやる」
「ありがたき幸せ――ッ!?」
「たーだーしぃ! 私が足をどけたらすぐに行け、いいな?」
そんな俺の後頭部を、国王はグリグリと容赦なく何かで当てつけていた。
そうかこの感触は足か。そうかい……!
きっと仲間たちも怒り心頭だろう。
それでも声を上げないのは、俺がやっていることを理解していると取っていいよな?
「ほぉら行けぇ! アッハハハハ!」
そう信じ、頭を蹴り上げられながらも無様に這って立ち上がる。
それに言われた通り絨毯も避けて歩いてやった。
それにもかかわらず兵士も厳しい目を向けてきたんだが?
薬士の扱いってのはずいぶんと辛いじゃないか。
「おい」
「なんですか?」
「王の言うことはあまり気にするな。ああいう御方だ」
……いや、厳しい目を向けざるを得なかっただけか。
小声でだが、励ましてくれただけでも救いになるよ。ありがとう。
ただ礼を口にするにはリスクがあるのでアイコンタクトで応える。
そうして謁見の間を後にし、城からも出て街へと戻った。
「さて、と……これからは初めての一人だ。気分を切り替えていくか」
仲間たちには悪いが妙な解放感だ。
あの陰湿な国王からようやく解放されたからだろうか。
思わず伸びをして大あくびまで出てしまった。少々下品だったか。
――しかし、だ。
いざ仲間がいないとなると何をしたらいいかわからない。
今まではフィルたちに散々と連れ回されていたからなぁ。
そう思うと今までの記憶もが蘇ってくるかのようだ。
幼馴染なあいつらとアルバレストを結成してから今に至るまで色々あったから。
もう懐かしいな、誘われた時のことは。
「ああそうだ思い出したぞ。こういう時にこそ冒険者御用達のギルドがあるんじゃないか」
昔の記憶を思い返していたら、ふと大事な事も閃いた。
そうだな、ギルドなら今の俺でも温かく迎えてくれるかもしれない。
「よし、じゃあ行くか。俺の新たな一歩の始まりだ!」
ただしちゃんと辿り着けたらね、ハハハ。
建屋の方に赴くのは何年ぶりだろうか。
今まではあっちから探してやってくることばかりだったからな。
……などと危惧していた訳だが予想はしっかりと当たってしまった。
記憶違いのせいで街を半周するハメになるとは。
それで苦難の末ようやくギルド建屋へと辿り着いた――のだが。
「なんだ、様子がおかしい……?」
ギルド前の雰囲気が以前と明らかに違う。
冒険者たちが走ってひっきりなしに建屋へと入っていく様子からして、来慣れてなくとも一目瞭然だ。
じゃあ、ギルドでいったい何が起きている……?
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