第185話 前日計量


 父さんから酷い風評被害を受けた。

 もう笑うのやめておこうかな。人の振り見て我が振り直せって言葉があるくらいだ。


 でもなぁ。テンションが上がったりすると自然に口角が上がっちゃうんだよ。この件に関してはガンホ選手の事を悪く言えないな。どうやら俺も同類だったらしい。


 あくまでこの件だけね。


 「お待たせしました。定刻になりましたので、明日行われるWBA、WBCそしてIBFウェルター級タイトルマッチの公式計量を始めていきたいと思います。まずはチャンピオンの皇選手お願いします」


 司会の人が韓国語でホニャホニャと言っている。まあ通訳さんに翻訳してもらって、いつも通りの事を言ってるって教えてもらっただけだけど。


 俺は上下のジャージを脱いでパンイチになる。すると記者席の方から感嘆とどよめきが。


 すげぇだろ、この身体。マジで今日まで完璧に作ってきたからね。バッキバキのゴッリゴリである。


 そしてそのまま機械に乗る。大丈夫って分かっててもこの瞬間は緊張するよね。


 「66.55kg。皇選手オッケーです」


 司会の人が俺の体重を言う。しっかりリミットギリギリ辺りまで攻めれたぜ。俺は機械の上でマッスルポーズをとってから機械を降りる。


 「続いてガンホ選手。お願いします」


 俺が終わったらいよいよガンホ選手。一体どれほどの身体を作ってきたか見ものですな。明日にはその身体を粉砕してやるんだから。


 俺は父さんに渡されたOS-1をちびちびと口に含みながら計量を見守る。


 「相変わらず派手な身体だなぁ」


 両腕と首元に派手なタトゥーが入ってるんだ。それも、いかにも悪役入れてそうなトライバル? タトゥー。これは偏見になるかもだけど。


 多分別の人が入れてたらカッコいいって言うかもしれない。俺だって般若と白蛇の刺青を入れてこればよかったぜ。


 まあ、タトゥーの話を抜きにしても身体はばっちり仕上がってる様子。これでぶよぶよの身体で出て来たらどうしようかと思ったぜ。


 負けた時に減量で失敗したからーとか変な言い訳をされずに済みそう。減量も含めて試合だとは思うけど、そういう事を平気で言ってきそうな奴ではあるからね。


 「66kg。ガンホ選手オッケーです」


 ガンホ選手も計量をしっかりパス。66kgジャストだったみたいだ。うむうむ。これで明日は安心してぶん殴れるな。


 「それではこれよりフォトセッションを行います。両者中央へお願いします」


 司会の人に言われて、上半身は裸の状態で二つのベルトを抱えて舞台中央へ。ガンホ選手も一つのベルトを抱えてやって来る。


 一瞬中央で向かい合い目が合う。

 俺の方が10cm以上身長が高いからか、自然と見下ろす形になる。ガンホ選手はそれが嫌だったのか、プイッと横を向いてカメラに身体を向けた。


 身長が高いって良いな。減量はキツいけど。今だけ変な優越感があるよ。素晴らしい身体をありがとう神様とママン。


 パシャパシャといっぱい写真を撮られる。この瞬間って実は毎回結構しんどいんだよね。良い身体で撮ってもらおうと思って身体に力を入れてるから。減量末期の身体には堪える。


 そしてフェイスオフ。

 向かい合って睨み合っての写真撮影。

 さっきは見下ろす感じを嫌ってたガンホ選手だけど、今は一転してニヤニヤしてやがる。


 俺はさっき父さんに言われた事を思い出し、笑わないように真顔を意識する。が、やはり自然に口角が上がってるっぽい。


 だってガンホ選手がちょっと苛立ってるもん。まあ煽れてるなら良いや。次の対戦相手からは気を付けます。


 そしてそのままお互い口を開く事なく、前日計量が終了した。


 何かしらガンホ選手が仕掛けてくると思ってたけど、特に何もなかったな。ちょっと拍子抜けである。


 何か企んでるんだろうか? まあ、何をして来ても今は勝つ自信しかないけど。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 すまんな。

 これだけ更新が遅れたぜ。

 最近如く8を始めて、ドンドコ島に滞在してたらあっという間に時間が溶けてもうたんや。


 気付いたら日付が変わっててびっくりよ。いつになったらメインストーリーに戻れるのか…。

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