第170話 VSウェルター級ホセ2
『ゴングと同時にホセ選手が突っ掛けた! これは皇選手のジャブを警戒したか!? リーチ差で近付けなくなる前にインファイトで勝負しようという事でしょうか!?』
速い。映像で見た時から体が大きい割に俊敏な動きをするなとは思ってたけど、実際相対してみると、想像以上だ。
ジャブ対策はどうするんだろと、出方を窺う気持ちでいたから、一瞬面を食らっちゃった。
でも、ほんとに一瞬。コンマ何秒くらいだ。俺は冷静にホセ選手が突っ込んでくるであろう場所を予測して右のパンチを打ち下ろす。
が、ホセ選手もそれを予想してたのか、ガッチリガードをして更に侵入してきた。そして完璧にインファイトの間合いに入ってくる。
俺の打ち下ろしまでは予想してたのかな? ワンパターンにならないようにしてたけど、もしかしたら無意識のうちにそうなってたのかも。
そんな事を思ってたら、ホセ選手はいきなり勝負どころとばかりに、猛ラッシュを仕掛けてきた。本来なら、俺も望むところとばかりに応戦するんだけど。
『開始直後からの猛ラッシュ! 皇選手のカウンターも不発に終わり、ホセ選手が皇選手のお株を奪う嵐のようなパンチの連打! これは皇選手は後手に回ったか! ……おおっと! しかし、パンチが当たりません! 凄いフットワークです!』
最近重点的に鍛えてる下半身の見せ所ですよ。俺はほぼノーガードのまま、足を動かしてパンチを巧みに避けていく。
なんかね、美咲さんに目が良いって言われてから、改めて思ったというか。なんというか。今日はパンチが良く見える。元々鍛えてたし、自覚はしてたんだけど、もっと意識して使うようになると、なんか見える景色ってのが違ってきて。
それに下半身を鍛えたからか、反射に体がしっかり付いてくるようになったのも大きい。今までは分かっててもガードするしか無かったのが、しっかりと避けれる。
これも階級を上げて筋肉をつけたお陰か。
時間にして約30秒。ゴングと同時にラッシュを仕掛けてきたホセ選手も、流石にひたすらそれだけ全力で無呼吸運動してたら、息継ぎの時間が必要な訳で。
『皇選手の左ボディが入った!! 思わずタタラを踏むホセ選手! ここで攻守交代だ! 打って変わって、皇選手の猛ラッシュが始まったぞー!!』
息を吸う為にパンチが止まった一瞬の隙。相対してるホセ選手にしか分からないだろうけど、右腕を動かして微妙にフェイントを入れてからの、左ボディ。
せっかく吸い込んだ貴重な息を全て吐き出させてやった。我ながら鬼畜な所業。でも昔の偉い人は言いました。人の嫌がる事は率先してやりましょうと。
肉を抉るような会心の一撃だったが、ホセ選手は少しふらついた程度でまだ耐えている。スパーリング三銃士相手なら、嘔吐間違いなしだったんだけど、流石は世界チャンピオンか。
相手は結構タフで評判だしね。
しかしこのチャンスを逃す俺じゃない。離れようとしたホセ選手相手に間合いを詰めて、お返しとばかりにパンチのラッシュ。
このまま1Rで仕留めれるかと思っていたら、ホセ選手が膝を付いてダウンした。
『ダウーン! ホセ選手! 皇選手の猛攻にたまらず膝を付いた! 開始直後から瞬きも許さない程のお互いの猛攻! しかし、まずは皇選手に軍配が上がりました!』
ちっ。わざと膝を付いたか。あのままラッシュを続けてれば、10カウントで起き上がれない程度のダメージは与えれそうだったんだが。
自分でダメージコントロールをしてくるとは、意外と強かな選手なんだな。これは1Rで仕留めるのは無理かも。
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