第4章 ウェルター級

第131話 卒業式


 「卒業式までに傷が治って良かったなー」


 「いや、ほんとそれな」


 本日。皇拳聖君。

 高校を卒業します。


 「痕も残ってないし。結構綺麗に切れてたのか?」


 「そうなんじゃない?」


 二月の最後の方にあった俺の世界タイトル戦。下馬評を覆すフルラウンドの激戦は、過去一苦しい試合だった。


 俺はカットするし、目は腫れるしで、卒業式はボコボコの顔で出席しないといけないと思ってたけど、綺麗に治った。


 俺は『超回復』が良い感じに作用してるのではと疑ってる。


 普通『超回復』って言ったら、筋肉云々の話を想像しがちだけど、回復だもんね。しかも超が付く回復。体力の回復とかも常人より早いし、傷の回復も早いんじゃないかと。


 それで良い感じに綺麗に治してくれたんじゃないかと思ってます。はい、チート。


 あ、でも世界戦の2日後に熱は出たな。微熱程度だったけど、過去一打たれたりしたから、体が熱を持っちゃったのかもしれん。


 今では医者のお墨付きも頂いて完全復活してるけどね。


 で、俺が気にしてたジェイソン選手。

 試合後に精密検査を受けた結果、命に別状があったり、今後の生活に支障をきたすような後遺症もないみたいだ。


 ボクシングも変わらず続けられるらしい。良かった良かった。あんな風になってまで、ボクシングを続けるって思えるのは凄いなって思うけど。


 下手したら死んでたかもしれないのにね。


 「龍騎には本当にお世話になったな」


 「なんだなんだ急に。そんなしんみりした事言うなよ」


 「いや、本当に感謝してるんだよ。お前がいなきゃ、卒業出来てたかどうかも怪しい」


 ずっと勉強を見てくれてたからね。チンピラみたいな見た目のくせに。とっても面倒見が良くて、試合も毎回応援に来てくれて。


 本当に感謝しかない。


 「大学に行っても頑張れよ。お前は見た目で損してるけど、俺が味方だからな」


 「一言余計なんだよ」


 龍騎は俺でも知ってる東京の有名大学に進学する。将来の夢を探しに行くぜと息巻いていた。是非頑張ってほしい。


 「拳聖の方がこれから大変だろ? ウェルター級への挑戦。日本人でこの辺の階級に挑むのはキツいらしいじゃないか」


 「まあね。でもこれからはボクシング一本に集中出来るし。それに俺の夢はヘビー級チャンピオンだからな」


 過去にはミドル級で世界チャンピオンだった人もいるけどね。


 ウェルター級で世界チャンピオンは日本人ではまだいない。スーパーウェルター級はいるけど。


 だから俺が達成したら、日本人で初めてのウェルター級チャンピオンになる訳だ。良いよね、日本人初って称号。気合いが入る。


 まあ、いずれ世界初の9階級王者になる予定だけど。ふははははは! ボクシング界のレジェンドになってみせるぜ!


 その為にもウェルター級で足踏みしてる訳にはいかないのだ。


 「試合の時は声を掛けてくれよ。絶対見に行くからな」


 「ああ。派手なKOを見せてやる」


 「この前の心臓に悪いのはやめてくれよな」


 それを言わないで。俺もビビってたんだから。審判とセコンドにはちゃんとお気持ち表明しておいたし、改善される事を願う。



 その後も龍騎とお喋りしつつ、あっという間に卒業式が終了。式の後にクラスメイトと写真を撮ったり、サインをいっぱい書いたり。


 普通に楽しかった高校生活が終わった。

 これから皇拳聖のボクシング生活の第二幕が始まるぜ。

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