閑話 リュカ


 「負けたー」


 「負けたな」


 試合が終わってホテルで一夜を明かした。

 試合後のリュカはダメージが結構あって、倒された時の前後の記憶がはっきりしなかったみたいだ。


 今ではしっかり現状を認識。

 ホテルでベットに寝転がりながら、ゴロゴロと負けた負けたを連呼していた。


 「どうする? 試合映像見てみるか? それとも国に帰ってからにするか?」


 「見るー」


 どうやら精神年齢が幼くなってるらしい。

 子供のように返事をしながら、テレビに繋いだ映像を確かめている。


 しかし、その目は真剣で、しっかり反省しているようにも見えた。


 「こうして見ると実力差がハッキリしてるね。本当に17歳なの?」


 一通り試合を見終わって、リュカはため息を吐きながら言う。確かに試合は7Rまでもつれ込んだものの、落ち着いてみると終始リュカは押されていた。


 「このボディだよ、ボディ。ジャブのくせに体にズシンと来るんだ。そりゃ足も止まるよね」


 「フリッカー以外のジャブを見せてくるのは予想外だったな」


 「考えてみれば当たり前だよね。フリッカーなんて色モノジャブを使ってるけど、基本が出来てない訳ないんだから」


 「俺達の対策不足か」


 「フリッカーをなんとかすれば、優位に試合を進めれるっていうのは甘すぎたね。そのフリッカーも予想以上のキレで序盤は苦労したし」


 一通り試合を見終わった後は、シーン毎に映像を止めて二人で反省会。これまでの勝った試合でもやってきた事だ。


 リュカは子供っぽい性格をしてるが、本質は真面目でこういうことを欠かさずにやってきたから世界チャンピオンになれたと思っている。


 残念ながらチャンピオンベルトは奪われてしまったが。


 「これってやっぱりマグレだったのかな。あの後一回もやってこなかったし」


 「どうだろうな。これを狙ってやれるとしたら相当だと思うが。皇ならあり得るんじゃないかと思っちまう」


 1R終了間際にやられた放ったパンチの腕にパンチをして、体勢を崩しての有効打。

 それ以降かなり警戒をさせられたが、結局使ってくる事はなかった。素振りを見せられて騙されていたんだろうな。


 「そう思わされた時点でダメだよね。あんなの警戒しない訳にはいかないよ。あの時のボディ、滅茶苦茶痛かったし」


 今も痛いよと言いながらお腹を摩るリュカ。皇のボディは強烈だった。

 それにリュカの足を止める為に、執拗にボディ攻めをされた事もあって、試合が終わった今でもジクジクと痛むらしい。


 「皇はこれからどうするのかな?」


 「減量が相当キツいらしいからなぁ。さっさと階級をあげちまうんじゃねぇか?」


 「そうしてくれるとありがたいね。とりあえず僕は二度と皇とは戦いたくないよ」


 この試合を見てすぐに挑戦者が現れるとは思えない。相手がいないなら皇も階級を上げざるを得ないだろう。


 「皇がライト級からいなくなってから、もう一度世界タイトルに挑戦しよう。今回は負けたけど良い経験になったよ。あのにやけ面をぶっ飛ばしたかったけどね」


 「だな。国に帰って練習すっか」


 「その前に日本を観光して帰ろうよ。こんな綺麗な街、国に帰ったらそう見れないよ」


 結局リュカと俺は1週間程日本に滞在してから国に帰った。

 リュカが日本のアニメに毒されてしまったが、大丈夫だろうか。

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