第62話 恋愛相談
「グッドモーニングエブリワン! OPBFチャンピオンがやって来ましたよ!!」
三が日を家でまったり過ごした。
試合後って事もあって、練習はランニングのみ。でも既に体を動かしたくてウズウズしてる。
三が日はジムが休みだったので我慢したが、四日になって我慢の限界。
俺は午前中から意気揚々とジムに向かった。
「あれ? 全然人が居ないですね」
「普通は三が日が終わったら仕事があんねん」
俺の大声が聞こえたのか、会長室から会長がやって来た。しまったな。会長の言う通りだ。少なくともスパーリング三銃士はいると思ったのに。
「いやいや。練習はさせへんぞ。1週間は体を休めてもらうで。7Rも戦ってんねんから」
「でもほとんどダメージはないですし」
ちゃんとお医者さんに問題なしと言われている。それに試合が終わってから三日。
ランニングだけは正直飽きたのだ。
「あかんあかん。そんなに暇なんやったら、取材でも受けるか? 結構依頼来とるで」
「そーいうのは事務所を通してもらってからじゃないの受けれないって言われてるんだけど」
調子に乗ってるとかじゃなくてね。
伯父さんにそう言えって言われてる。
人気になってきたら、有象無象が嫌でも寄ってくるから、そう言っておけば良いとアドバイスを貰ったんだ。
「とりあえず練習はあかんで。ほんまは走るのもやめてほしいくらいや」
「暇死しちゃいますよ」
「友達と遊びに行ったりしたらどうや。お前はまだ高校生やろ。彼女とかおらんのか?」
「俺はボクシングが恋人さっ!」
会長め。痛いところをついてたな。
俺もちょびっと気にしてるんだ。俺は自慢するようで申し訳ないけど、母さん譲りの綺麗な顔をしてると思う。
それにボクシングでもそこそこ人気になってきて、彼氏にするなら中々の好物件じゃないかと思うんだが。
何故かそういう浮ついた話が一切ない。
俺が鈍感系な主人公みたいな男だったら良かったんだが。そういう訳でもなさそう。
俺にはボクシングがあるからと誤魔化してたけど、やっぱり彼女が欲しいなと思いますよねぇ。
「どう思う?」
「俺に言われてもだな」
「いや、ここは彼女持ちの意見も聞いておこうかと」
結局練習させてくれなかったので、チンピラに連絡したら暇してると言うので、Mのマークのファーストフード店にやってきた。
俺はこの店が大好きなんだけど減量とかの関係上、試合が終わってすぐぐらいにしか来れない。
エビフィレオのセットをがっつきつつ、アドバイスを貰う。こいつは中学一年から幼馴染と付き合ってる。
「拳聖はなぁ。なんか良い人って感じなんだよな」
「良い事じゃないか」
「いや、なんて言うんだろうな。そういう対象になり辛い良い人というか」
おやおや? これはもしかして気を使われているのかな? クソみたいな奴だけど、そうは言えないから、良い感じの事を言って誤魔化そうとしてらっしゃる?
「いや、まず拳聖の理想が高いのが問題だ。あの大女優の皇美春と比べられるって考えたら、大抵の女子は気後れする」
「むっ」
確かに。俺は常々結婚するなら母さんみたいな人と公言している。理想が高すぎたのか?
「マザコンって思われてるのかな」
「それもあるかもしれないな」
マザコン…。うーん、俺はマザコンなんだろうか。母さんの事というより、家族の事は大好きだけども。それでもお相手の女性と比べたりしないよ?
「高校を卒業したら出会いが無くなるんだよな」
「世界チャンピオンになったら芸能人とかと知り合えるんじゃないか?」
むーん。父さんと母さんはどう出会ったんだろうか。帰ったら聞いてみようかな。
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