第29話 反省


 試合が終わってからは家に帰って、母さんが用意してくれていた俺の大好物の唐揚げをしこたま食べた。試合が終わって一週間ぐらいはね。好きな物を好きなだけ食べたい。

 それが終わったらまた節制の日々なんだけど。

 特に俺はまだまだ成長期なので油断出来ない。


 重量級にいけばある程度食べられるかな?

 でも俺は『超回復』さんがあるからなぁ。

 トレーニングすると際限なく筋肉がつくとおもう。今は階級とギリギリ釣り合いが取れてるけど、そろそろやばいかも。

 ヘビー級に至るまでやっぱり節制かな。


 聖歌にも良く頑張りましたで賞っていう、画用紙で作った表彰状を貰ったので、俺のテンションは鰻登り。早速ファイトマネーで額縁を注文せねばなるまいて。大事に部屋に飾らせてもらおう。


 応援に来てくれていた学校の友達からもたくさんおめでとうメッセージが送られてきていたので、それを返信してから眠りについた。


 そして翌日。

 今日は土曜日なので、朝からジムに向かう。

 流石に試合翌日なので練習はしない。それでもランニングと柔軟、『コーディネーション』と動体視力を鍛えるトレーニングはやるけど。


 「うわ。マジでギリギリでしたね」


 「せやなぁ。ボンもあの場面で良く首捻ったわ。もしかしたら倒れてたかもしらへんで」


 今やってるのは昨日の試合の振り返り。

 見てるのは俺がマジでやばかった場面だな。

 これを見てるとまだ心臓がドキドキしてる感じがする。終わった事なのに冷や汗かいてるし。

 ほんと紙一重だったなぁ。


 「油断してるつもりは無かったんですけどね。やっぱり心の中に慢心があったのかもしれません」


 「1R目のダウンも伏線なんやろなぁ。今までポイント勝ちしてきとった奴が、わざわざダウンしてまで策を使ってくるとは思わへんで」


 漫画とかでさ。

 『目が死んでる』とか、『あいつの目の輝きはまだ失っていない』とか、そういう描写があると思うんだけど、俺はそんなん刹那の間に分かる訳ないじゃんって内心思ってたんだよね。


 でも、前回の試合で本当に分かるんだと思った。

 身を持って理解させられた。ダウンのフリして前のめりに倒れてたきた夜木屋選手の目は、マジでギラギラしてたからね。

 あれを見て瞬間的に危険を察知出来て、ギリギリで首を捻れた訳だから。

 これからは馬鹿に出来ませんよ。


 「まぁ対処法としては、相手がダウン寸前でも手を休めるなって事やわな。審判が割って入るか、完全に倒れるまで打ち続けろって事や」


 「ですね」


 うむうむ。

 これまた一つ勉強になったなぁ。

 夜木屋選手に感謝。これでまた俺は一つ強くなりましたぜ。これを糧に更なる成長をしてみせます。


 「次の相手なんですが」


 「おう。既に日本チャンピオンには試合の打診はしてあるで。今は向こうの返事待ちやな」


 伯父さんと代理人の話をしたけど、正式におれについてくれるのは、日本チャンピオンになってからである。日本内のマッチングはなんとかなるからね。外国の猛者と戦う時に、有能と噂の辣腕を振るってもらうとしよう。



 それにしてもプロ三戦目で日本チャンピオンに挑戦かぁ。

 早い方だとは思うけど、過去には四戦で世界チャンピオンまで登り詰めた猛者がいるんだよな。

 普通にすげぇ。アマチュアの実績があって、プロのライセンスやら、試合のマッチングも上手い事噛み合ったんだろうけど。


 俺は流石に無理だなぁ。その代わり、前人未到の9階級制覇は成し遂げてみせるから、それに期待してて下さいって事で。

 とりあえず高校生の間にライト級は奪取する。

 これが直近の目標かな。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る