第25話 試合巧者
「ふむ? なんか…」
「パッとせえへんか?」
次の試合相手が正式にライト級日本ランク1位の夜木屋選手に決まった。
今はジムで試合映像を見てるんだけど…。
小園選手の方が強そうだなぁって。
「そうっすね」
「勝ってる試合が殆ど判定勝ちやからな」
プロ19戦
勝ち14
KO勝ち2
負け4
引き分け1
なんかパッとしない成績だなと思ってしまっても仕方ないんじゃなかろうか。
なんか初めから倒す気があんまりなさそうなボクシングスタイルなんだよね。
序盤からポイント狙いのパンチをポカポカと打って、試合を上手くコントロールしてるなって印象だ。
「とにかく守備が巧い。リーチも拳聖とそない変わらんしな」
自分はアウトボクシングで少しでも近付かれたらクリンチ。目が良いのか有効打を滅多に貰わない。
「こういう相手との試合はかなり勉強になるんやぞ。観客受けはせーへんやろうけど、これも立派な戦術や。玄人好みって言ってもええかもしれんな」
「どう立ち回るのが良いですかね?」
「それは親父と相談やな。アウトボクシングでジャブの差し合い勝負してもええし」
ふーむ。迷うなぁ。
とりあえず全部の試合映像を見てから考えるか。
「よし。そのタイミングだ」
「上手く体を畳む必要があるけど、これは有効になりそうだ」
「拳聖は本当に器用だな」
現在は父さんとミット打ち中。
夜木屋選手のクリンチ対策をしてる所だ。
近付いてクリンチしようとして来たところを体を回転させてアッパーをかち上げる。
俺のそれなりに大きな体を畳むのに少しコツがいったけどね。幼少期から『コーディネーション』訓練は欠かしてなかった成果がでてる。
出来ればボディにも叩き込みたいところなんだけどな。ほら、はじめの一○の主人公がゼロ距離でボディを打つ感じみたいに。
鷹○もやってたっけ? それを今練習中なんだよね。体重移動が中々難しい。
「後はこれか」
ジャブの差し合い。
正直これで負ける気はない。
俺のフリッカーは変則的だしね。
それに。
「両利きって羨ましいな」
「父さんもやろうと思えば出来るでしょ」
俺は左ジャブからスイッチして右ジャブへ。
これはまだ試合で見せてもいない。
別に秘密兵器でもなんでもないし、温存してる訳でもないんだけど。
やるタイミングが無かっただけ。
「夜木屋選手みたいに距離感を大事にしてる選手には上手く刺さりそうだよね」
「だな。普段からやってるから付け焼き刃でもない。どこかのタイミングでやってみるのも悪くないだろう」
次の試合の武器はこんなもんかな。
後は更に練度を上げていく。
そしてそして。
「くくくっ。最近の練習はこれをする為に頑張ってるといっても過言じゃないな」
「ああ。これがあるから辛い練習も乗り越えられる」
「ボコボコのボコにしてやる」
チンピラみたいな事を言いながらリングに上がってくる三人。
この人達は俺の普段からのスパーリング相手で、ボディを強化するのにずっと付き合ってくれてたいたジムの先輩だ。
ボディ強化の練習はずっと継続してるんだ。
今ではお腹周りの筋肉はガチガチなんだけどね。
それでも小園選手に良いのを一発貰った時は、ちょびっとえずいたし、まだまだ鍛え方が足りなかったって事だろう。
図らずも先輩のストレス発散にも貢献してるらしいし? まぁ、この練習が終わったらボコボコにやり返すんだが。
「じゃあ今日もお願いしますね」
「「「ヒャッハー!」」」
どこの世紀末なんだよ。
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