歩く災害と呼ばれた男

Jaja

第1章 幼少期

プロローグ


 「それでは! チャンピオン! すめらぎ拳聖けんせい選手の入場です!!」


 リングアナウンスと登場曲が流れていよいよ俺の出番となる。

 トレーナーをしてくれている親父に促されて、シャドーボクシングを中断する。


 「行くぞ拳聖」


 「うぇーい」


 登場曲が流れると共に会場が真っ暗になる。

 雷の様なゴロゴロとした音。嵐のような効果音。

 会場の電飾を綺麗に使ってかなり派手な演出をしてくれている。

 俺の登場曲はかの世界的アーティスト『ルトゥール』がわざわざ俺の為に作ってくれた神曲だ。

 歌名は『災害』。

 それに因んで、俺の異名は『歩く災害』なんて呼ばれている。


 音楽の最後に赤コーナーに落雷が迸る。

 それと同時に会場の照明が再び点灯し、俺はリングに颯爽と舞い降りた。


 「けんせー!!」


 「今日もKO期待してるぞー!!」


 「日本人でもやれるってところを見せてやれ!」


 リングに上がるとたくさんの観客からの大歓声で迎えられる。有明アリーナは今日も満員御礼。

 こんたたくさんの人に応援してもらえてありがたい限りだ。

 俺は観客に手を上げて歓声に応えつつ、対戦相手と向かい合う。


 「おーおー。怖い顔しちゃって」


 対戦相手はアメリカの世界ランキング2位。

 名前は忘れた。なんちゃらかんちゃらjrとかだったはず。


 リング中央で向かい合い、レフェリーからの注意事項を聞いてる間もずっと怖い顔をして、こちらを睨み付けている。

 俺はそれをニコニコと笑って受け流す。ずっとそんな顔をしてて疲れないのかね。


 「これでスーパーミドルともおさらばだ」


 「分かってると思うが油断するなよ」


 「する訳ないだろ。見とけよ親父。重量級のキングまで一直線だ」


 スーパーミドル級もこれで三回目の防衛戦。

 今回の防衛戦に勝利したらWBA.WBCのベルトを返還して階級を上げる。

 日本人選手としては前人未到の重量級の世界ベルトにチャレンジする。


 そしていよいよゴング鳴る。


 俺はいつも通りガードをかなり下げて、ノーガード気味にして相手のパンチを誘う。

 別に舐めてる訳でも挑発してる訳でもない。これが俺的には一番戦いやすいからやってるだけなのだ。


 俺が大好きなのはカウンター。

 相手が俺のガードを見て飛び込んできたのに、綺麗に合わせるのが大好きなのだ。あの手に残るぐしゃっとした感覚。

 一撃で相手の意識を刈り取る、デス・カウンターは俺の必殺技として有名なのだ。


 しかし相手もしっかり研究して来てるのか、迂闊に飛び込んできたりはしない。

 ジリジリと間合いをはかり、リング中央をゆっくりと回る。


 「しゃらくせぇ」


 俺はカウンターが大好きだが、別にそれ一辺倒のボクサーではないのだ。

 インファイトも大好きだし、相手の間合いの外からひたすらジャブを打ち続けるのも大好きだ。

 極論、相手をボコボコに出来ればそれで満足なのである。

 特に大好きなのが。


 『おーっと! 皇! ガードを下げたまま無造作に相手に近付いていくー!!』


 『皇選手の誘いに相手は乗ってきませんでしたからね。不用意に飛び込めば伝家の宝刀が牙を剥きます。それならばインファイトの方が可能性があると思ったのでしょう』


 相手のパンチが届く距離まで近付く。

 それでも相手は申し訳程度のジャブしか放ってこない。俺はそれを軽く捌いて更に近付く。

 そして、これ以上は近付けるのは不味いと、少し強めの大振りなパンチになった瞬間。

 待ってましたとばかりに僅かにガードが緩んだボディにフックを叩き込む。


 苦悶の表情をするなんちゃらjr。

 これこれ。この顔が大好きなのである。

 ボディで悶絶してるのをみるのがたまらない。


 ここからはもう独壇場だ。

 亀の様にガードを固めた相手にお構い無しにパンチをぶつけていく。

 会場のボルテージは1RからMAX。

 たまらず相手が手を出してきたところに的確にカウンター。そしてダウン。


 対戦相手の意識は既にもうない。

 またしても1R決着。TV局の人ごめんなさいね。


 こうして俺のスーパーミドル級最後の防衛戦は呆気なく終わった。




 【歩く災害・皇拳聖】


123:名無しの応援者

ダウーン!!


124:名無しの応援者

早い!


125:名無しの応援者

早すぎるwww


126:名無しの応援者

マジで異次元すぎるだろ


127:名無しの応援者

もうスーパーミドルには敵無しだな


128:名無しの応援者

うわぁ

相手ピクリとも動かないじゃん


129:名無しの応援者

災害さんは当て勘がやばすぎる


130:名無しの応援者

目が相当良いんだろうなぁ


131:名無しの応援者

カウンターもやばいけど普通にスピードとパンチ力が超人染みてる


132:名無しの応援者

スピードなんてこの階級じゃおかしいぐらいに速いからな


133:名無しの応援者

軽量級のスピードに重量級のパンチ力


134:名無しの応援者

ただのバケモンで草


135:名無しの応援者

おおー

ライトヘビー級に挑戦表明


136:名無しの応援者

いよいよか


137:名無しの応援者

まさか日本人から重量級のベルトを狙えそうな選手が出てくるとはなぁ


138:名無しの応援者

果たして重量級相手にも災害さんのパンチ力とスピードは通用するのか


139:名無しの応援者

ここから先はマジで魔窟だからなぁ


140:名無しの応援者

まだ若いんだしこのままヘビー級まで制覇して欲しいもんだ


141:名無しの応援者

夢が広がるなぁ


 

 

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