僕は当て馬で負けず嫌い、でも世界で一番優しい幼馴染がいる
舞
第1話 入学式
「やっとだ」
そう呟いた
勝は中学3年の夏に同じクラスの女子、
負けず嫌いな勝には、それが地獄の苦しみに等しかった。
当時A判定が出ていた
普段は合理的に生きている勝だが、今日だけはテンションがハイになって、自分で自分を抑えきれない様子。
それは、電車の中でも続いて自然に口角が上がった状態が続いてしまう。しかし、そんな時に痴漢を見つけ気分が悪くなる。
(こんな幸せな日に…)
普段ならどうするか考えたかもしれないが衝動的にその手を掴む。
「おい、痴漢するな!」
「え、僕じゃないですよ」
「うるせえ!俺がそのまま手を取ったんだから間違えてるわけないだろ!」
電車内でそれは大事になって事情聴取をするという話になっていった。
(おいおい、今日こんなことで遅刻なんてありえないぞ)
そんなことをしていると、自分の降りるはずだった駅に電車が到着する。
「あとは任せました!僕はここが学校なんで!」
そう言って、体のでかいおじさんに痴漢を任せる。少し冷静になって俺から僕に一人称が戻る。
「え、ちょっと君!」
その声を無視して一目散にホームへ逃げる。
危なかった。せっかくあいつがいない学校なんだ。最初から「首席のスピーチを欠席した人」にならなくてよかった。
見て見ぬフリをするべきだったのかもな、とハイになっていた自分に少し反省する。
しかし、そんなことはしようとしてもできない、勝はそんな人間である。
そんなことを考えて歩いていくと、後ろから声をかけられる。
「もしかして、勝?」
振り返るとさっきまで痴漢被害に遭っていた女子がいる。
「もしかして
さっきは気づかなかったが、
「そうだけど、さっきはありがと」
「春希も降りたのか…」
被害者と捕まえた人がいなくなって、観衆と痴漢だけが残った電車内がどうなっているか想像がつかない。
「あはは…」
「…どうせだし一緒に行くか?」
「うん。なんか勝、中学生の時よりずっと元気になったね」
「あー、色々あってね」
実際に色々あったのは中学生の時の話だが、答えを濁す。
そして久しぶりにも関わらず意外と会話が弾みながら学校まで歩いた。
「僕は1組か」
「あ、同じだ。同じクラスなんて5年ぶりだね」
「え、もうそんな経つの?」
「うん!1年間よろしく、電車ではありがと!」
久々に会った幼馴染とも意外と仲良くできたし、幸先のいいスタートが切れるかもしれない。
少し冷静にはなったが、春の訪れを感じて勝は上機嫌のまま入学式へと突入した。
「新入生代表挨拶、
「はい!——暖かな日差しに包まれ〜」
新入生、在校生の顔を見渡しながらスピーチをしていく。今なら誰とでも仲良くできそうな気さえ湧いてくる。
しかし、ここである驚いている顔を見つけてしまう。中田恋だ。
「そんな中、私の目標は………」
目の前が真っ白になり、黙ってしまう。
その後、スピーチをなんとか乗り切ったが、どう乗り切ったかを思い出せない。
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