第20話 四人の刺客
『千年後に目覚めた友人へ。私を許してくれとは言いません。ですが、最後の私の望みをきいてください。どうか自由を手に入れてください。|城木家寿(しろきいえひさ)』
壁画の日本語を読み上げた途端に音声認証が条件に組み込まれた結界魔法術式が発動し、壁の壁画の部分が開いて奥の部屋につながった。
「こんな空間があったなんて…ムーニー家に生まれて55年ですが全く知りませんでした。」
「無理もないです。特殊な結界ですから。」
俺たちはそのまま奥に入った。中には光る水晶体がいくつもあり、その水晶体の中には今朝一緒にいた巨人王と巨人の兵が眠っていた。
「…美しいですね、小次郎さん。」
水晶体を見たマーガレットは目を輝かせて俺に言った。
「あぁ。魔水晶ってやつだな。体も魂も丸ごと封印されている。」
「砂漠でみんなここに転移されて強制的に封印されたんですよね?なんで小次郎さんだけそうならなかったんですか?」
「…分からないが、とりあえず今はこの封印を解こう。ムーニーさん、出来ますか?」
「あっ、それなら私が。主人より封印術は得意です。」
デルフィーさんがそう言うとさっそくまとめて全員の封印を解いた。
「ここはどこだ…」
「王!王は無事か!」
「ここだ。どうやら、ここに飛ばされて封印されたところを小次郎くんが助けてくれたみたいだね。」
少しざわついたがみんな元気なようだ。俺は事情をみんなに説明した。ここにいるマーガレットとゼラさんのご両親のこと、この場所のことや俺がなにをしていたかも一通り全部。
「なるほどね…!命令変更だ。君たちは先に全員白虎狩りに行きなさい。できれば生け捕り、無理なら殺しても構わない。すまないね、べラルゴさんにデルフィーさん。彼はとんでもなく強いから恐らく生け捕りは厳しい。」
「…仕方ありません。私たちは大人しくここで生け捕りを祈ってます」
べラルゴさんとデルフィーさんが今まで以上に暗い顔をしている。俺と会ってからずっと悲しそうだったのに…。無理もない、一日で罪人になった息子が目の前の兵たちに殺されるかもしれないのだから。
「王様は行かないんですか?」
「僕はちょっと用事がある。ずっと探してたのが、まさかここにあったとはね…。」
そう言って彼はさらに奥にある魔水晶を見た。あれだけはデルフィーさんも封印を解けなかったようだ。
「ゼラとバーバラの居場所は分かるんだろ?」
「はい。速く行かないとマズイです。」
「じゃあ先に行っててくれ。僕はすぐ向かうよ!…彼女とね」
俺は数十人の巨人兵とマーガレットを連れてすぐにゼラさんのところに転移することにした。全員一箇所に集まって転移陣を地面に描いた。
「それじゃあ行ってきます!」
「あぁ!気を付けてね!あと死なないでくれよ?」
「任せてください!王様!」
俺たちは転移をした。
「さ!君たちはもう戻っていいよ!もうさっき彼の描いた魔法陣は記憶してるからどこに行けばいいかは分かってるよ!」
巨人王様はべラルゴさんとデルフィーさんにそう言うと2人は上に戻った。
「…久しぶりだね。今から全力で君を自由にするよ。1000年も待たせてすまない。」
彼は魔水晶の中の少女の封印を解き始めた。
俺たちは巨人の森の外れにあるかなり大きな洞窟の入口に転移した。
「これからここに入ります。バーバラはこの奥です。」
「小次郎さん、ここ結界があって入れないですよ」
たしかに強力な結界が張られていた。
「思ったより遅かったですね、吉川さん。」
ゼラさんの声が洞窟から響いた。
「少し寄り道をしていたので笑 それより…バーバラを出せ。ゲス野郎。」
「師匠に向かって酷い言いようじゃないですか笑 安心してください。彼女は奥でちゃーんと面倒見てますから。」
「壁に手足を磔ておいて何を…」
「おや、見えるんですか?その眼まさか…」
ゼラさんはかなり驚いているようだ。
洞窟の中から大柄の赤い魚人が現れた。
「まぁ、あなたたちの相手は私ではないですから。これから私はやることがあるのでね!紹介しましょう!私の協力者であり四人の精鋭部隊”ニューアンチテールズ"の一人、アルフォース・シーノーです。そして彼も含めてニューアンチテールズは全員、私と同じ半人間族です!」
「ニューアンチテールズ?アンチテールなら確かに貴様が集めた部隊だが、何十人もいるはずだろ!」
巨人の兵の1人が言った。
「えぇ。アンチテールは全員にちゃんと計画を話しましたが、賛同してくれる者はほとんどいなかったため、全員殺しましたよ。」
残ったのが四人だけってことか。仲間を何十人も殺すなんて…
「どこまでもクズだな…魚人、とっととどけ!」
「断るッ!」
「仕方ない…貰った斧を使えば結界なんて簡単に壊せる。」
「通らせるわけないだろ!人間が!」
めんどくさいタイプだ…これがあと四人もいるのか。
「小次郎さん、ここは私が。みなさんはお先に行ってください」
マーガレットが急に名乗りを上げた。彼女は相当強いし、彼女ならやつも倒せるかもしれない。
「すまない。任せた。俺たちは先に行きましょう。」
「…かたじけない。我々には敵いようがない。」
巨人の兵士はみんな悔しそうな顔をしている。敵のアルフォースから感じる魔力とあの体格なら束になっても勝てないと判断したのだろう。
「マーガレット、頼むぞ」
「はいッ!」
俺はマーガレットに合図を送った。マーガレットがアルフォースに魔法を放ち、同時に俺はヘイムダルの戦斧を取り出して結界に切りかかった。
アルフォースは両手剣で魔法を切り防御をした。かなり打ち消すのに苦戦しているようだ。
「貴様…かなりの手練れだな、少女よ!」
「あなたの相手は私です!」
俺は結界を切って消すことができた。
「みなさん!速く行きましょう!」
巨人兵たちと俺は洞窟の中に入った。
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