第12話 裏切りへの疑い
ゼラさんにバーバラと訓練を受けて約半年がが経った。
この日はたまたま広い戦場を想定した戦いを訓練するためにバーバラとゼラさんが結界付近の砂漠に出払っていたため、俺は早朝にバーバラのお父さんと職場でもある城に向かった。
「本当にバーバラちゃんと行かなくていいのかい?」
「大規模な魔法は大丈夫ってゼラさんに言われているので大丈夫です!それに自分、王様にちょっと相談したいことがあるので、」
「そうか。なら平気かな!」
パパさんは納得したように微笑んだ。
城の前の階段は変わらずとんでもなく大きい。
「自分は瞬間移動できますが、一緒に転移します?」
「そうだったのかい!?ぜひ頼むよ!」
「門の前までしかできませんし、体が耐えられるかわかりませんかいいですか…?」
「あぁ!たまにバーバラちゃんと転移してるからね!」
俺はパパさんの腕をつかんで転移した。
「いやぁありがとう!毎日職場まで送ってほしいくらいだよ笑」
「いえいえ!そうなればいいですが…。」
「なにがだい?」
「いや、なんでもないです!!」
俺たちは門を開けて王様に会った。
「久しぶりだね!小次郎くん!今日はどうしたんだい?」
「少し、相談したいことがありまして…」
「なるほど、じゃあ隣の会議室で話し合おうか!」
「はい!ありがとうございます!」
王様と隣の部屋に向かおうとしたとき、突然王室の窓を割って剣が飛んできた。
「な、なんだこれは?!」
「陛下!お下がりください!」
周りの護衛の巨人の兵士が慌てて王様を取り囲んだ。
「王様、大丈夫です。これはバーバラの剣です。」
「バ、バーバラちゃんの剣がなんでここに??!」
パパさんは心配そうに聞いてきた。
俺は剣を掴んで引き抜いた。剣身の樋の部分に文字が刻まれていた。
「なにか書いてあるのか、。読んでくれるか?」
筆跡は間違いなくバーバラのものだ。俺は剣の文字を読み上げた。
『私たちは騙された。助けてコジ』
「コジ?」
「おそらく僕の名前を書く途中で時間がないと判断して飛ばしたのでしょう」
「ば、ば、バーバラぁぁぁ!」
お父さんはかなり取り乱している。
「バーバラくんがどこにいるか分かるかい?」
「今朝、ゼラさんと大規模魔法の訓練で砂漠に向かいました。」
「君を誘わなかったのはこの機会を作るためか…。」
周囲にゼラさんを怪しんでざわつき始める。
「とりあえず小次郎くん、君は武装して砂漠に向かいなさい。私も兵を連れていきます。」
「陛下のお手を煩わせるほどではないでしょう。私たちで十分です。」
「バーバラくんは我々に”私たちは騙された”と伝えたのだよ?ゼラの実力なら国家転覆も十分にありうることだ。」
王様の一言で一気に空気は静まった。
俺と王様は急いで準備をした。お父さんは一度家に帰りお母さんとともにバーバラの帰りを信じて待つよう指示された。
「いいですか?王様」
「あぁ。みないつでも大丈夫だよ。」
「この人数の転移は初めてですが、できる限り頑張ります。」
「私の魔力を君のスキルで盗めるのなら私の魔力を使いなさい。まだまだ残量はたくさんある。」
「分かりました。ありがとうございます。」
「|狂盗(ヴォール)!」
俺は王様の魔力を砂漠への転移に必要な分だけ盗んだ。
「古式魔法陣錬成!空間転移!!!」
王様と兵士十数人も含めた大きな魔法陣を錬成して全員を砂漠のど真ん中に転移させた。
砂漠についてもバーバラとゼラさんの魔力は一切感じない。
「散ってバーバラくんを探せ!」
「「「はっ!」」」
十数人の兵士が一斉に返事をした。
「待ってください!聞こえますか?この声」
王様たちは耳をすませるとバーバラの声で「助けて…」と言っているのが繰り返し聞こえる。
「明らかに罠だな…。」
「えぇ。ですが行かないわけにもいきませんね、。」
俺たちは全員で声のする方へ向かった。
少し歩くと結界に寄りかかるようにボロボロになったバーバラがうつむいて座っていた。
「ば、バーバラ!」
俺たちは走って近寄り、俺がバーバラの肩を揺らして意識があるか確認しようとすると、顔が無く魔法陣が大きく書かれていた。
「王様!みんな!離れて!!」
大きな爆発とともに魔法陣が発動された。
俺たちは全員ほかの場所に転移されて散り散りになってしまった。
爆破で火傷などの外傷が俺の体に無数にできている。だがなぜか、傷口からなにかが染みて腕や足が痺れる。俺はリングでバイタルを確認した。
《名前》|吉川小次郎(よしかわこじろう)
《メインスキル》|大盗賊(グレートバンディット)
《レベル》840《バイタル》火傷、毒状態
《魔力残量》95%《魔力指数》4869
「毒状態…。」
おそらく神経毒の類のものが傷口から入ったのだろう。これではしばらく動けないままだな。
とりあえず辺りを見渡した。
「ここはどこだ…?」
片田舎の村のようだ。人間サイズの家や物を見るのは久々だ。
「なんの音だ?」「爆発か?」
俺がここに来た時の大きな音が響いたようでかなり村人?が寄ってきた。
村人を見てみると全員エルフだった。どうやらここはエルフの里のようだ。
人間族に迫害を受けたエルフたちの移民を巨人族が受け入れて居住地を与えたことは知っていたがこんなところだったとは…。
俺は動こうにも毒で動けないのでいつの間にかたくさん村人が集まってきた。
「ちょっと、みんな、通してくださいー!」
一人のウルフカットの女の子が民衆を掻き分けて俺の前に来た。
「あ、あんた…まさかアッシュくんじゃないですか!」
近づいてきたエルフの女の子はそう言うと急に泣き出してしまった。
「生きてたなんて…帰ってきてくれてほんと良かったですー。」
「勘違いしてない?俺ここ始めてきたしそもそもエルフじゃないよ?」
俺は髪を上げて耳をみんなに見せた。かなり村人たちは驚いている。
「なんで…でも…どうして人間になったんですかぁ!」
「俺は最初から人間だよ笑 半年くらい前にこっちの世界に転移してきた。」
「あぁまさか。」「なんということだ…」
異世界転移したことを伝えるとみんなとても驚いた。
「…と、とりあえず私の家というか、私たちの家に来てくださいぃ!そこなら解毒薬も作れますー!」
俺は彼女に連れられて彼女の家に向かった。
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