第10話 自分との闘い

あれから、何日が経ったのだろう。身体の疲労はお互い無いし睡眠も排泄もいらないから永遠のように続く。


「いい加減はやくしないか?!何ヶ月間もここで俺と戦ってるのに1本も取れないなんてなぁ!」

「…うるせぇ」


永遠の牢獄に閉じ込められている。考えるんだ。

考えることを諦めたらそれこそ終わりだ。


こいつは俺にここでなにを俺に伝えようとしてるんだ。ここでなにをしてるんだ。なんのために…


俺はなぜ俺に勝てない…。俺に足りないものは…。

目をつぶって考えた。集中して頭の全ての引き出しを出して…。


俺が許せないものは、弱さ。弱いやつは無性に嫌いだ。弱虫泣き虫は昔から大嫌いだし、自分より弱いやつも全般見下し生きてる。

かといって上のやつもそれはそれで嫌だ。


昔から弱さが嫌いで、運動会も勉強もなにもかも負けるのは嫌いだし、有り得ない。弱いみんなを表には出さずとも見下して生きていた。

そのせいで色んな知らない奴に反感を買って、気付けば1人になっていた。近くにいたはずのやつは離れていった。


でも周りのやつなんてどうでもよかった。何を言われても俺には全く響かなかったし、親も先生もみんな俺には文句は言ってこないし言わせなかった。


俺は、そんな俺を許せなかったのか…。


いつからだろう。こんな風に感じていたのは。



俺は昔から両親から色々な習い事をさせられてきた。でもだいたい、何年かある程度やれば親も十分と言って辞めさせてくれた。

何回か賞をとったり大会で優勝したりすれば辞めさせてくれるし、文句も言わない。


学校に通って、テストの学年順位も運動も芸術科目も全部こなしてたら飽きてきたから、追いかけるのはやめた。それなりに成績も中の上か上の下くらいにしておいていた。


そんな俺が気に食わなかったのか、ある日中学でいじめの標的にされた。


こういうのは最初はそこまで激しめなのではなく陰湿なものから始まる。

登校するとまず上履きが無くなっていた。よく分からずに気にせず教室に行くと、机と椅子が無かった。


机を探すと窓にたかる陽キャどもがカッターの切り傷でいっぱいの机と椅子を持っていた。

「これ落ちそうだけど、だいじょーぶ?www」

「ほらほら!とめないとだよ?www」


俺は腹は立たなかった。弱いやつがなんかほざいてるとしか思えなかった。

でもこのままだと必ずいじめは続く。それどころか絶対激化するだろう。


俺は全員をやり返した。もちろんみんなの前で。一人一人の顔や手足をなるべく原型をとどめないように殴り続けた。

もうやられないようにするために見せしめの意味も込めて結構やったけど、やりすぎたようだ。周りの視線が痛かった。



それ以来か、ずっと独りになってしまったのは。


俺は自分で、それを知らないうちに自分を見下してたんだ。ここに来る前から自分の弱さを無意識に見下していたんだ。



「気付いたようだな。目を開けろ。」

目を開けると俺の刀がヤツの2本の剣を跳ね除け、ヤツの首元に刃先があった。


「これは…。ありがとう。」

「あぁ。さぁやれ!…また会えるといいな」

「会えるさ」

「忘れるんじゃねえぞ!任せたぜ!」


俺はヤツの首を切り落とすと目が覚めた。

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