妖精と空へ飛び立つハルピュイア

チェンカ☆1159

ロンディ視点①

第一章「小さき者の旅はここから」

第一羽「あるハルピュイアの悩みごと」

またできなかったな。新しい友達。

森の中で、私は一人落ちこむ。

たしかに私は変わってるのかもしれない。「怪物かいぶつ」だの「化け物」だの言われてしまうのだって理解できる。

だって変だもんね、この体。

上半身はほぼ人で、下半身は鳥。うでがない代わりにつばさを持っている。ハルピュイア。それが私達の種族の名前。

私達ハルピュイアは、このルイア島に住む種族の中で最もいた存在だった。

そうなったのは見た目の他にもう一つ。

食べ物ドロボー。

他の種族からそんなあだ名がつけられていた。

そう呼ばれるようになったのには理由がある。

私達ハルピュイアは他の種族よりも食欲が旺盛おうせいで、食べ物を目にするとだれのものでも気にせず食べてしまうという悪い習性があった。

今は自制する個体が増えて来たのでだいぶ落ち着いているけれど、昔は本当にひどかったらしい。

それに完全にいなくなったわけではないので、他の種族は野外で食事をしないよう注意していた。

加えて外で育てている野菜や果物については、畑や果樹園にワナをしかけるなどきちんと対策をしていた。それで怪我けがをして帰ってきた仲間も少なくない。

そういうわけで私達ハルピュイアは島一番のきらわれ者となってしまった。

悲しい。ハルピュイアみんなが悪いわけじゃないのに。他の誰かの物は食べないって、ちゃんと我慢がまんする良い子だっているのに。

みんなは他の種族と共存することをとっくにあきらめているけれど、私はちがった。

私は他の種族とも仲良くなりたい。

けれどもそれはとても難しいことだった。

みんなにとってのあたりまえを変えることは厳しいことなんだと、身を持って知った。

「はぁ……」

私はため息をつく。

どうしたら仲良くなれるんだろう。

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