その9 真犯人

 38年前に一家5人が殺害され、金品を奪われて民家が放火された強盗殺人・放火事件。通称○○事件。


 逮捕されたZ氏が犯人と認定され死刑判決が確定したが、冤罪の可能性が指摘され再審開始。


 冤罪とみられるとされZ氏は釈放されたが、釈放されるまでに35年も時間を要したZ氏はもう高齢である。


 Z氏を有罪だとする検察側と、冤罪だと主張する弁護側との闘争は未だに続いている。


 が、Z氏は無罪である。そもそもZ氏は事件を起こしていない。


 にもかかわらず約40年近く、一度きりの人生の時間を、罪なき罪によって台無しにされているのだ。


 気の毒とかの言葉では言い表せない。


 俺は新聞やテレビでこの○○事件を見聞きするだけで、身の毛がよだつ思いに晒される。


 何せ、俺が真犯人なのだから。

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