新ラジオ番組「ヒャクモノガタリ」

@kotorihiiragi

第1話 ある村の話 表

「皆さんこんにちわ!今日から始まる新番組。ヒャクモノガタリキャスターの望月琴   

 莉です!そして~」


「放送作家の空坂楓です。」


琴莉「この番組は基本的に、私たち二人と、

   ゲストの方の三人でお送りしていきま~す。」


楓「そして、今回のゲストは、

  あの人気女優、氷花麟ひょうか りんさんです!」


麟「どうも~氷花麟で~す。よろしくお願いしま~す。」


楓「よろしくお願いしま~す。」


琴莉「なんか、麟さんめっちゃ綺麗ですね!」


麟「ハハハ、ありがとうございます。琴莉ちゃんもかわいいですよ。」


琴莉「あ…ありがとうございます!」


楓「なんと、麟さんはこの番組がラジオ初出演と聞いているんですけど…」


麟「はい、その通りです。なので、めっちゃ緊張してたんですけど。すごい、あの、 

  二人の雰囲気で、安心しました。」


琴莉「あはは、それはよかったです!」


楓「それでは、早速ね、お話を聞いていきたいと思うんですけど、

  怖い話はどうです?お好きだったりしますか?」


麟「私はそういうのはちょっと…心霊ロケもNG出してもらってます。

  けど、弟が旅行好きで…なので、

  今回は弟が話してくれたお話をしたいと思います。」


琴莉「それでは、お願いします!」


麟「はい。



「これは、五年前に青森の端っこの村に旅行しに行った時の話です。

その日は帰る予定だったんですけど、山に入った後に台風が来て、帰れなくなったんです。

でも、その時に光が見えたんです。たくさんの。

近寄ってみると、それは、たくさんの家の窓からこぼれる電気でした。

「お前さん!」

不意に、後ろから声が聞こえた。

「入んなさい。そっちは怪物が出るぞ。」

弟はお言葉に甘えて、家に入れてもらうことにしました。

「君はどこから来たんだい?」

「僕は、青森の北の方から来ました。氷花です。」

「私は杉谷奏子。こっちの人はここの村長の杉谷雄二。私のおじいちゃん。」

「すいません。急に入れてもらっちゃって。」

「いいわよ。私らが入れって言ったしね。今日は止まってきな。雨はやまんだろうし、怪物が出る。」

「あの…入れてもらった時から気になってたんですけど、」

「ん?どしたの?」

弟は、絶賛料理中の奏子さんに聞いた。

「”怪物”ってなんですか?」

「あぁ…迷信みたいなものだよ。ちょっと待ってて。おじいちゃんの方が詳しいから、呼んでくるよ。」

「えぇ!そんな、いいですよ…」

「いいからいいから。」

 数分後、奏子さんは強引に雄二さんを連れてきた。

「そんじゃあ、あとはこの人に聞いてね。」

 そう言って自分はそそくさと台所に戻っていった…

 しばし沈黙が流れる。

 その沈黙を切り裂いたのは、雄二さんだった。

「それで、なにが聞きたいんだ?」

「へ?」

「何か聞きたいことがあるから呼び出されたんだろ。」

「…はい。」

「えっと、”怪物”ってなんですか?」

 ”怪物”という単語を口に出したとき、雄二がピクリと動いたのが見えた。

「お前さん、怪物について知りたいのか?」

 雄二さんが意外なものを見るような目で、食い入ってくる。

「はい…近いです…」

「あぁ、悪い。でも、怪物について知りたいなんて珍しい旅客だなぁ。」

「旅客自体が珍しそうですしね。」

「いうな。」

 雄二さんが遠い目をする。

「まぁ、迷信みたいなもんだよ。」


【怪物様は日が出る時間は神の様に私たちをお守りくださる。

 だが、夜は別。凶暴な怪物となって出てくるでしょう。】


「って感じの。今は子供を寝かしつける文句だがな、」

「はぁ、」

「あと、お前さん。憑いてるよ。」

「ついてる?」

「あぁ、これは…影絵だな。」

「え?え?どういうことですか⁉」

「落ち着け。」

「影絵ってのは、人の闇というか、ひとが見たくないものが結晶化したようなもんだ。憑かれると…」

「憑かれるとどうなるんですか⁉」

「…著しく自己肯定感が低くなったりするが、大丈夫だ。」

「なんで?」

「なんでって?わーたしが来た!」

「オール〇イト!」

 楽しんでんじゃねえよ。

 てか、オールマイト知ってんのか。

「いまから、払うことができるが、やるか?」

「もしかして、きついんですか?」

「まぁ、適応状態にもよるが、」

「じゃあ、お願いします。」

というと、雄二さんは、

「奏子~蝋燭持ってきてくれ~」

 と、孫をこき使う。

「それじゃあ、やるぞ。」

「はい、」

「除霊の手順は覚えてるな?」

「勿論」


~10分前~

「それじゃあ、除霊の手順を説明する。」

「用意するものは。蝋燭と光が漏れないような部屋。」

「影絵は影だ、この方が見やすいからな。」

「お前がやることはただ一つ。30分間理性を保つこと。」

「はい。」


「それじゃあ、始める。」

「主に隠れし暗がりの影よ 主から離れ 永遠に影となれ」

 呪文を唱え始めると、心臓が後ろに引っ張られるような感覚に落ち、その後のことは記憶していない。

「大丈夫か?」

 気が付くと、リビングに寝かされていた。

「は…はい…」

「今日はもう寝ろ。疲れただろう。」

「あ…ありがとう、ございます。」

 弟の意識が眠りに入るのは一瞬だった。」


麟「って、言う話です。」


琴莉「お~…すごい、お上手ですね!」


麟「ありがとうございます。」


楓「もしかしてそれ、S村の話じゃないですか?」


麟「よくわかりましたね。今では地図にすら載ってないのに。」


楓「私の母がそこ出身なんです。」


麟「そりゃまあ偶然!」

 「補足だけど、弟は今も元気に旅行してます。」


琴莉「それでは、お時間がやってまいりました~。それでは、最後にゲストの麟さん

   に一言もらいたいと思います。」


麟「とても、楽しい時間でした!ありがとぅございました!」


楓「それでは、麟さん、リスナーの皆さん。ありがとうございました!」





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