第23話 家系の話

 ご隠居と丁稚が話している。


「で、わしにどうしろと?」


「この図を写しつついい感じにいじっていただければ」


「何じゃこの変な図は」


「なんでも家系図とかいうものだそうで。若旦那がご隠居に聞けば万事大丈夫というからあたしも詳しくは聞いてないんですがね」


「なるほど家系図か! わしも若い頃はいくつか書いたもんだわ、よし、適当にやってやろう」


「ありがとうございます。他人が見て『おお!』というようなやつを書きましょう!」


 そう言ってご隠居は家系図を書き上げる。

 丁稚は若旦那に家系図を持ち帰る。


「若旦那、できました」


「早かったねお前。ちょいと見せてご覧、おかしなところがないか見てやる」


 若旦那は家系図をちょっと見てすぐ顔を真っ赤にする。


「いったいどうしたんだいこれは!? 本当に爺様に見せたんだろうね!?」


「ええ若旦那、きっちりご隠居とお会いしてまいりました」


「本当だろうね!? じゃあここは一体何なんだい!?」


 若旦那が指差すところには武田信玄と上杉謙信の文字があった。


「私が見たときは信玄公の名前があったのは覚えてる、でもねえ、謙信公の文字はなかったよ!」


「でもご隠居、『信玄公がいて謙信公がいないとは何事だ』っておっしゃいまして」


「本当に爺様が言ったのかい!?」


 若旦那は頭を抱える。


「若旦那、いったいどうしたんです?」


「お前、家系図がなんなのかわかってたんじゃないのかい!?」


「分からないところはあたしがご隠居に聞けばいいと思って」


「ああ……お前に命じた私が馬鹿だったよ。爺様も爺様だけどねえ……いいかい家系図っていうのは私たちとご先祖様とがどう繋がっているかを示すものさ。信玄公と謙信公とでは子ができないじゃないか!」


「あたしも言ったんですが、ご隠居が『謙信公は女じゃ!』と言い張るもので」

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