第15話 コロッケパンの話

 コロッケパンというものを食べたことがない。

 そう断言したいところだが、案外記憶に残っていないだけかもしれない。

 いつか食べたような、いないような、そんな存在感である。


 炭水化物の塊で、ソースが大切な要素という共通点を持つ焼きそばパンと比較すると、コロッケパンというのはずいぶん影が薄いような気もする。

 思えば、学園モノの作品で焼きそばパンの登場率は高い。

 調査していないので断言しきれないが、焼きそばパンの存在感を増強しているのがフィクションの力なのではないか。

 ではコロッケパンをもっと人気にしたければ何かしらの創作で登場させるのが良いのだろうか。


 実際は難しいのではないか、というのが私の考えだ。

 まずその作品が人気になる必要がある。

 ここがかなり難関であろう。

 ただですら今の時代は娯楽の群雄割拠である。

 そうほいほいと人口に膾炙することができるなら、もっと夢のある話を聞けていいはずだ。

 仮に人気になったとして、次に問題となるのはコロッケパンがいかなるアイテムとして登場するかだ。

 かなりのミーハーな人間であれば簡単にコロッケパンを食べてくれるだろうが、人によってはなかなか手が伸びないということもあり得よう。

 重要アイテムとして登場しても、違和感をおぼえるようなタイミングであれば好感を得にくいに違いない。

 難しいものだ。


 しかし、一度絶品のコロッケパンが登場すれば、影の薄さも変わるかもしれない。

 コロッケパンが人気の店、というのは聞いたことがないものの、研究を重ねればいずれ主力商品になりえるだろう。

 味の追求に邁進するコロッケパン好きのパン屋さんが現れるならば、という但書がつくけれども……。

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