第12話 海外ドラマの話
チャイムが鳴る。
ジョンがドアを開ける。
「ハーイ、ジョン!」
ガタイが良くなったエヴリンが入室する。
二人はハグする。
「ハーイ、エヴリン! 久しぶりだね! 強くなったんじゃない?」
ジョンがエヴリンを抱きしめ困惑しながら言う。
どこぞからドッと起こる笑い声。
「親方ほどじゃないけどね? 次はヨコヅナ目指せるかもだって」
「えーと、君の親方ってダンプカーを投げた……」
「ううん! ダンプカーに投げられたの!」
どこぞからドッと起こる笑い声。
一人だけ激しくツボに入ったのか長い引き笑いを繰り返す。
ジョンが困惑知っつつカウチを指す。
「座る?」
「ええ、もちろん。カウチポテトも修行のうちだって女将さん言ってたし」
「チャーリー・ブラウンの妹みたいに?」
「そうね、でもあれまだまだみたい」
「まだまだって?」
「真剣にやったカウチポテトなら普通三日で幕入りできるって」
どこぞからドッと起こる笑い声。
エヴリンはしたり顔でカウチに座る。
「ところでエヴリン、今日はなんの……」
「ああ、そう! 明日までに人を増やさないといけないのよ!」
「人を増やすって?」
「相撲部屋よ! ジョン、あなた良さそうな人知らない?」
ジョンはさらに困惑する。
「ええと、エヴリン、僕は人材派遣会社じゃないんだ」
「知ってる。でもおねがーい」
エヴリンはジョンが持ってきたポテトチップスの袋をひったくる。
そのままテレビをつける。
『えー、現在九回表、球界の大御所が集まりましててんやわんやでございます……』
「野球やってるわよジョン!」
「どういたしまして」
「あら、あなた人材派遣会社じゃなくて球団の運営会社の社長だったの!?」
「違うよエヴリン。僕は社長ですらないんだ」
「じゃあなんなの?」
「ニヒルなバーテンダー」
どこぞからドッと起こる笑い声。
エヴリンがしたり顔を見せつける。
「君が取ったウケじゃないよエヴリン」
「じゃああなたが取ったの?」
「……あー、認めたくないけど、そう。僕はニヒルなバーテンダーじゃないんだ」
「ならなんなの?」
「アヒルの餌やり係」
どこぞからため息が一斉に出る。
エヴリンは懐疑的な目を向ける。
「それ、儲かるの?」
「そこそこ」
「そこそこ」
「うん、そこそこ」
「なら決まりね!」
「何が!?」
エヴリンはしたり顔で立ち上がる。
より一層ジョンは困惑する。
「ジョン、いい話があるの」
「嫌な予感がするよエヴリン」
「うちの部屋に入るのよ!」
「やめてよエヴリン、僕は君みたいに強くはないんだ」
「いいから、後から強くなれるわよ!」
エヴリンは力強く勧誘する。
ジョンは抵抗する。
「やめてよ、やめてってば」
「いい話じゃないジョン! 部屋に入ればそれなりに儲かるわよ!」
「それなりにって!?」
「そこそこよりはそれなりに上」
「じゃあやめとくよエヴリン、僕はテッポウが苦手なんだ」
「慣れればできるわよ!」
「やめろってば!!」
ついに怒りを爆発させたジョンはエヴリンの方を強く押す。
エヴリンは百フィート吹き飛ばされる。
ジョンは肩をすくめて、
「またやっちゃった」
どこぞからドッと起こる笑い声。
数人が激しくツボに入ったのか長い引き笑いを繰り返し、一人はむせる。
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