語り部はガムのように
木倉兵馬
第1話 プレーリードッグの話
落ち着いて聞いてほしい。
俺は今プレーリードッグに尾行されている。
いや追跡されていると言ったほうが正しいか。
ともかく連中は地獄の果てまでもついて来るに違いない。
スマホ入力には慣れていない。
だから書き間違い特にごいについては見逃してくれ。
俺はアメリカの名前をおぼえにくい州で仕事をし終えた。
無限にも思える平野の上で月と星が勝利を祝うように輝いていた。
そして何かを踏んだ。
グニュリとしたいやな感触。
あのときほど糞を踏んだほうがマシだと思ったことはない。
いやな感触はプレーリードッグを踏み殺してしまったからだ。
以来プレーリードッグどもは追いかけて来る。
仲間の仇を討つためだろう。
走る俺の後ろを奴らはつけてくる。
なんとも言えない鳴き声をあげ少しずつしかし確実に増えている。
もうすぐ夜が明ける。
遠くにピザショップの看板が見える。
急いで来てくれ。
このままだと奴らに殺られる。
なるべく早く来てくれ。
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息絶えた男のスマートフォンには以上の記載があった。
捜査班の意見によると、この内容は酔いどれサムの与太よりひどいとのことだ。
おそらく砂漠で幻覚作用のあるサボテンを摂取したためだと思われるが、数十フィート近くでぐちゃぐちゃになった獣らしき死体が発見されたこととの関連はまだわかっていない。
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