Uの雪 二部

深々ロア

 時刻は5時半

 俺は仕事の支度をしていると

 疲れて寝ていた井上が目を覚ました


「・・・・ここって北神君の・・・」


 不安そうな声でそう言った井上に

 俺は「何もして無いから、

 元気になったら机の上にある

 鍵使って出て行っていいから」

 そう顔を合わさずに言っていた


 俺はこの後仕事がある事を言い

 冷蔵庫の中にあるものを

 勝手に食べても構わないとも言った、

 自分はスペアキーを持ってるので

 鍵は玄関扉の郵便受けの中に

 入れてくれて構わないと言った


「・・・ごめんね北神君」


「謝る事じゃないから・・・

 それに、俺も勝手な事してごめん..」


 俺は玄関を出てバイトに向かった

 1人落ち込む井上を残し


 バイトに向かう道中

 俺は積もった雪の上を歩きながら

 数時間前の出来事を思い出していた


 俺の勝手な思い込みで家を出て

 偶然、路上で倒れている井上を見つけ...

 あのまま

 俺が井上を見つけられていなかったら

 井上はどうなってしまっていたのだろうか


 アパートの階段を登っていた時

 俺は井上が階段から落ちないよう

 しっかりと俺は井上を抱き抱えた、

 その時

 井上の柔らかい肌や

 髪の毛からの良い匂いが...


 って!!何考えてんだ俺は!!

 俺は変な事を思い出し

 顔を真っ赤にさせていた、

 さっきまでは井上の事を思い

 そんな事考えても無かったのに

 安心して馬鹿な事考えてしまってる


 ・・・・・

 抱き抱えてる時

 井上の胸元をしっかり見てしまった、

 俺は自分の手を口で塞ぎ

 凄く気持ち悪い奴だと思っていた


 俺は井上の事が好きなのか・・・・・


 その場で足を止め

 俺は少し考えてしまった


 こんなフリーターの男

 誰が好きになるんだ、

 俺は不真面目でだらしなくて

 皆から嫌われていた、

 いや...自分から距離を作っていた、

 それに俺は....


 昔の事を思い出し

 俺は頭が痛くなっていた、

 嫌な事から逃げ出した訳じゃない

 でも逃げ出す事しか出来なかった

 俺が悪いのは分かってる

 でも本当に俺が悪いのか?


 昔の記憶が呼び起こされ

 俺の頭の痛みは強くなる


「・・・駄目だ、バイトに行かないと」


 重い足を動かし

 俺はバイトに向かった

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