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「…ああっ…!くう…!」


「あ」


「ほら見ろ!やべーだろ?ってどこ見とんじゃ!」


「いや、ココには魔法陣があるんだな…て」


「あ、ほんとだ」



俺が部屋の端に魔方陣を発見するとどうやら女性がピンチに陥ったらしく藤原が怒ったようにツッコんできた。



「いや、そんな事よりあの人やべーぞ!」


「マジだ」



藤原が焦ったように指差しながら言うので女性の方を見ると…



ミノタウルスの一体に足を掴まれて壁や地面に何度も激しく叩き付けられた挙句、髪を掴まれて食べられそうになっている。



「海!」


「へいよ」



藤原の指示に俺が兵を召喚すると姿が消えて柴田の隣には食べられそうになっていた女性の姿が。



「めっちゃボロボロじゃん。俺らには『逃げなさい!』とか偉そうな事言ってたのに」


「…うっ…」



柴田は文句を言いながらも袋から実験器具のようなビンを取り出して女性に飲ませる。



「おっ、ソレ回復薬?」


「そうそう」


「さっすが柴田君やっさし~」


「うわイラつくわー」



藤原の弄るような言い方に柴田は本気でイラついたような表情をして返す。



「で、どうする?魔方陣あるしコイツ俺の兵に運ばすか?」


「いいんじゃね?」


「…はっ!お嬢様!お嬢様は…!?」



女性の運び方について話していると当の本人が目を覚まして急に飛び起きた。



「あなたたちは…!」


「起きたな」


「目が覚めるの早くね?」


「…一体、なぜ…?」



女性は辺りを見渡して鉄格子の向こう側で鉄格子に向かって攻撃している三体のミノタウルスを見た後に俺らを見て不思議そうに呟く。



「動けるならソコの魔方陣から入口に戻った方が良いんじゃない?」


「外に馬車が停まってるからさ」


「んじゃ、最後の一人行きますかー」


「まっ…!待て!」



俺らが優しさで指示したのに女性は引き留めるような事を言って手を伸ばす。



「なに?」


「…お嬢様が…お嬢様がどこかに囚われている!手遅れになる前に…!たのむ…!」


「手遅れって…」


「…急いだ方が良くね?」



女性が悔しそうに頭を下げて頼み、その内容に俺らはさっき女性がミノタウルスに食べられそうになったシーンが頭に浮かんできた。



「急ぐったって…どこに?」


「とりあえずこの奥?」


「どうやって?」


「それは…」



女性が魔方陣で居なくなった後に俺らはそのお嬢様とやらが囚われている場所を思い浮かべるが、どこに居るのか見当も付かない。



「とりあえず横穴に兵士を送り込んでみるか。何か分かるかもしれんし」


「そ、そうだな!」



マッピングはゲームの基本なのでまだ行っていない場所を兵士に探させる事に。



「げ」


「どうした?」


「この奥はダメだ。広い空間があるけど、ミノタウルスがめっちゃ歩き回ってて宝箱しかない」


「じゃあ次は斉藤んとこか」



まさかの行き止まりで俺らは別れ道まで戻り、そこから真ん中…



さっき斉藤を助けた場所へと戻った。



「おいおい、まだいるぜ」


「藤、お前のスキルであの二体隔離できねーの?」


「ちょっとやってみるわ」


「「お」」


「出来た!見た?見た!?凄くね!?」



柴田の無茶振りに藤原がチャレンジした結果…



二体のミノタウルスが姿を消して藤原は興奮しながら喜ぶ。



「擬似ワープに敵の隔離とか…がっつりチートじゃね?」


「だな。…なんで俺だけ仲間外れなんだよバカヤロー!!!」



鉄格子の鍵を開けながら俺が聞くと柴田は普通に頷いた後に息を吸うと思いっきり横穴に向かって不満を叫ぶ。



「…ャ…」


「ん?なんか今悲鳴のような声が聞こえかった?」


「聞こえたか?」


「いや?さっきの叫び声のやまびこかなんかじゃね?」



少し奥に進んで歩いていると先頭を歩いている柴田が振り返りながら聞いてくるので藤原に聞くも首を振る。



「そうかぁ?…そうかもな」


「つーかまだ先があるのかよ…」


「結構広いな」



ひらけた空間でミノタウルスの群れを避けながら進むもまた別れ道が出て来て俺はゲンナリしながら呟く。



「…もしかしてだけど」


「なに?」


「なんかあったのか?」



俺のふとした思いつきに柴田と藤原が立ち止まった。



「あの広い空間って最初の別れ道のどこからでも行けたんじゃね?」


「…マジ?」


「じゃあわざわざ斉藤んとこまで戻らなくてもそのまま進んで良かったってことか?」


「…多分」


「…はあ…マジか…」


「萎えるわー…」



歩き疲れている中での俺の発言に二人はやる気を無くしたかのように呟く。




ーーーー




「…お、なんかまた広い空間に出たな」


「もしかしてココが本当の最深部か?」


「おい!アレ!」



急に石造りの床や壁になり…いかにもボス戦のステージのような部屋に入ると藤原が何かを発見したように指を差して声を上げる。



「お、アレが最後の一人?」


「一人だけ扱いが違くね?」


「お嬢様って言われてたからじゃね?」



天井から鎖でぶら下がっている鳥籠のような物に入っている女の子を見て俺らは他の捕まっていた人達との格差を感じながら話す。



「とりあえず助け…」


「な!」


「は!?」



俺らが部屋の真ん中に浮いている鳥籠に近づくと急にバタン!と大きな音がして入口が塞がれてしまった。

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