第22話誤解もお蚕様もないのよ
犬猫等の小動物がじゃれあう様な姿に思わず笑みがこぼれる。
前の世界でもこの世界でもどちらにしても俺は、あまり友人知人と言うものがおらず。こういう楽しい雰囲気を横から見ることもあまりなかった。
美人姉妹の微笑ましいレベルのキャットファイトを眺めていると、互いの気が済んだのかこちらを見て謝罪した。
「お母さんから聞いてた通り……鳴涼館に居た」
「え、まっマジですか……。い、いや、ふざけてないのは分かるんだけど……なんで
さも当然と言った口調で唯は疑問を口にした。
「知らないの？ 唯……ここは男女共用の寮だよ……前の戦争で男の子が減ってしまったから今は、事実上女子寮になってるだけ。男性の人口少ないから……」
先の防衛戦の時国民は武器を取って立ち上がった。
ラジオやテレビでは世界から供与された重火器の使い方や、メンテナンス方法を放送されアメリカ軍が供与した。Ⅿ16自動小銃のＡ2やＡ3モデルやⅯ4カービンを主軸に戦闘が起こり、各国の義勇兵やこの国の６０歳から15歳までの人間の多くの男性が戦死した。
「そうなの！？」
と驚きの声を上げる。
「……だから共有スペースに男子トイレがあったのか……じゃぁなんで寮の女の子たちはもの凄く殺気立ってるんだろう……」
「はぁ……さっきまでの唯の態度が答えよ」
妹の態度に呆れたのか。ため息をつく。
「なるほど確かに女子寮って思っていた所に、男子がいるっていうのは反感買っちゃうよね……はたから見れば、ハーレム願望を持った変態男が親戚の教師のゴリオシで無理矢理入寮してきたって言われてもしょうがないかも……」
「うん。やっぱりこうなってるよねぇ……」
そう言ってスマホで開いているラインのグループチャットを見せる。
「一年の女の子二人が今度は入って言ったけど。大丈夫！？ 酷いことされてないかな？」
「何かあったら直ぐに叫びな!! ドアを蹴破って壊してでも踏み込むから!!」
「マスターキーってどこだったっけ？」
「今すぐチ○コもいだほうがいいわ。犯される」
など。これに似たようなコメントが爆速で流れていく。
「……」
あまりの言われように絶句してしまった。
酷い言われようだ。何もしていないのに……。
彼女たち鳴涼生にとっては、俺が鳴涼館に引っ越して来た時点で被害を与えたという事であろう。
まるでvtuberや人気のある生放送をする人のチャット欄のように、爆速でチャットが流れる。
どうやら。ドアの向こうで俺へのヘイトがドンドンと風船の膨れ上がっているようだ。その憎しみは虚像に過ぎないと言うのに……
「まっまぁそう気を落とさないでよ……私達が悪い奴じゃないぐらいは鳴涼生の皆に言っておくから……」
と俺の手を取ってそう言ってくれた。
「……ありがとう頼んだよ」
「任せて！ ……って言えないのが辛いとこだけど……」
唯はそう言って目を泳がせる。
少し頼りない印象を受けるものの。数少ない信頼のおける友人が味方してくれるのは心の底から嬉しい。
再びチャイムが鳴る。
少しもたついているとドア越しの声が聞こえる。
「あら留守なのかしら……」
「か、カオル先輩少し時間を改めましょう……も、もしかしたら、もしかしたらですし！」
どうやら先輩方のようだ。
「あら、それなら少し時間を空けた方がいいかしら……」
「そ、そうですよ。」
「まぁ、もしがアレばそのときよ。それに玄関のドアを開けたところで、直ぐにはベッドは見えないわ……だから一人でシてるところに遭遇しても大丈夫よ」
などと不穏な会話をしている。
余計なお世話だ！！
俺は急いで玄関のドアを開けた。
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『あとがき』
読んでいただきありがとうございます。
本日から中編七作を連載開始しております。
その中から一番評価された作品を連載しようと思っているのでよろしくお願いします。
【中編リンク】https://kakuyomu.jp/users/a2kimasa/collections/16818093076070917291
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