第21話ブラッディームーン
先輩たちの協力で俺の引っ越しの荷物はほとんど片づけが終わった。
「すいません。手伝わせちゃって……」
先輩の首筋に溜まった玉のような汗が、ツーっと流れ落ち控えめな胸元へと落ちていく……その様子が俺には酷くセクシーなもに見えてしまい視線は、首筋から鎖骨、鎖骨から胸元へと地球の法則の様に吸い寄せられていた。
「ふふふふ。いいのよ。今日越してくるのは分かっていた事だし、多分シズリ先生もそれを見越して行けって言ったと思うから」
鈴谷先輩は俺の方をチラリと見て微笑すると、俺が胸元を見ていたことを気に留める様子もなく自然な態度でサラリと流した。
気が付いた上で見逃してくれたんだろうなぁ……
「あははは。確かにシズリ先生って面倒見はいいけど、問題児と優等生をマッチングさせて楽してる部分はありますしね……」
アンナ先輩の瞳のハイライトが消えた。
「それで出会ったのが先輩方と……」
なるほど。問題児専門の介護人を見つけるのが得意なあの人らしい手口だ。
「おい。こーはい流石にうちに失礼じゃないか?」
「まぁまぁアンナ。全て事実じゃない。一年の時にシズリ先生に私を紹介されるまで出席日数もギリギリだったじゃない……」
「うっ! それはまぁそうですけど……」
杏那先輩は流石に旗色が悪いと感じたのか、それ以上何も言う事は控えた様だ。
「須藤君。お夕飯は誰かと約束とかしてるかしら? していないようなら一緒に夕食でもどうかしら? 近所の喫茶店なんだけど……ケーキも食事もおいしいのよ」
「予定はありませんけど……いいんですか?」
「もちろん。ここだと話しずらい事もあるし……いいわよねアンナ?」
「うちがカオル先輩に逆らえる訳ないじゃないですか……それに今日はバイトもないですし……」
「それもそうね……20時にこの部屋に来るからお財布だけ持ってきなさい」
「それじゃぁーこーはい。またなぁー」
二人は去っていった。
汗でべっとりと張り付いた前髪を不快に感じて俺はシャワーを浴びる。
折角綺麗な女の子達と食事するのだからと、脇や耳の裏と言った汗や皮脂が溜まりやすい部分を入念に洗い、真新しいシャツとパンツを履いて玄関の横にある冷蔵庫へ向かう。
いくら四月の陽気とは言え風呂上りの火照ったカラダには、冷たい飲み物が飲みたくなるからだ。
今日はサイダーでも飲もうかな……
そんな事を考えながら冷蔵庫のドアを開けた瞬間。
玄関のチャイムが鳴った。
ピンポーン。
「はーい」
部屋に備え付けられたディスプレイを見ると、雛未と綾瀬がそこに居た。
「あ、豊君こんばんわ~~お部屋入れてくれない?」
「引っ越しの荷物片づけるの手伝うよ」
「鍵開いてるから入っていよ」
「「はーい」お邪魔しまーす」
するとガチャリと音を立ててドアが開いた。
俺は忘れていた。今現在俺はパンツとシャツしか着ていないことを……
そしてそんな状況に遭遇した女子が、どんな行動をするのかとという事を……
「……あ」
俺は一瞬固まった。
パンイチの男が冷蔵庫を開けている光景が、エントランスにいる他の生徒たちに御開帳されているしかも今ここで、唯と香が悲鳴でも上げてしまえば、俺は良くて変態。悪くて露出狂や色情魔、レイプ野郎と呼ばれても仕方がない状態だ。
二人は叫ぶことを我慢した様子でドアを閉める。
「……ズボン履いて……」
と言う唯の言葉に、俺は無言で頷くと急いでズボンと上着を着て謝罪した。
………
……
…
分かれからの事を所々省きながら説明を終える。
「へーそれで豊くんは、私達以外の綺麗なお姉さん達と、よろしくやってたって訳なんだ」
香はジト目でこちらを見ながら、ストローでサイダーをちゅるちゅると吸っている。
「いいなぁ~~年上のクールで包容力のある美人系お姉さんって! うちのおねぇにはない属性でうらやましい」
「唯それどういう事?」
「い、いやぁ~~」
姉妹喧嘩が勃発しかけているのを横目に俺はソーダを飲んだ。
============
『あとがき』
読んでいただきありがとうございます。
本日から中編七作を連載開始しております。
その中から一番評価された作品を連載しようと思っているのでよろしくお願いします。
【中編リンク】https://kakuyomu.jp/users/a2kimasa/collections/16818093076070917291
読者の皆様に、大切なお願いがあります。
少しでも
「面白そう!」
「続きがきになる!」
「主人公・作者がんばってるな」
そう思っていただけましたら、作品のフォローと、最新話ページ下部の『☆で称える』の+ボタンを3回押して「★★★」にして、評価を入れていただけると嬉しいです。
つまらなけば星一つ★、面白ければ星三つ★★★
読者の皆様が正直に、思った評価で結構です!
多くの方に注目していただくためにも、ぜひ応援していただけると嬉しいです!
誤字脱字報告、気になる点、感想は『応援コメント』へお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます