第18話 ロリじゃないですけど!?
茶髪で小柄な女性は見知らぬものを警戒する野生動物の様に、長身の女性を盾のようにして俺の部屋に入る。
借りてきた猫のような態度に、俺は思わず笑みをこぼす。
フードにはうさぎの耳の様な長い装飾が付いていて、より一層可愛らしい印象を受ける。
「
「わ、わかってますって……
「全くこの子は、季節の変わり目には散財するんだから……」
「いや馨先輩うちの散財は毎月の事ですけど!?」
アンナと呼ばれた茶髪ツインテールの先輩は、カオルと言う長身スレンダーな女性に注意される。
どもって返事をしたことを考えると、いつもの事と言った感じであろうか? 信頼のできる先輩後輩と言う関係は憧れる。
自分の場合年の近い先輩が、入社後2か月で辞めてしまい。そのあとは特定の教育係と言うの人が付かずに宙ぶらりんの状態で、一年ほど過ごしたため他の社員から習得が遅いだの文句を言われた。
「お茶とお菓子を準備するので、少し座って待っていていてもらえますか?」
「ええありがとう。お茶の用意ならこの子を使うといいわ」
そう言うとアンナと呼ばれていた少女の方を指さした。
「馨先輩!?」
「後輩の男の子に、ケーキを御馳走になるのだからそれぐらい働きなさい。いつもしてるでしょ?」
「馨先輩わかりました。わかりましたから! それ以上は言わないでください……」
「物分かりがいい子は好きよ?」
アンナと呼ばれた少女がてとてとと台所に歩いてくる。
「おい。こーはいカップとポットと給湯器はどこだ?」
俺があまりにジロジロみてしまった事に、怒ったのか呆れたのか「はぁー」とため息をついた。
「あまりうちの事ジロジロ見るな。確かに小さくて珍しいかもしれないケド……」
「すいません。肌が白いし髪も綺麗な茶髪だなって……」
「いいよ。実際よく言われる。まぁ一番はムネの話だけどな。大きくたって良いことないんだけどなぁ」
などとしみじみ語っている。
確かに大きい。小学生の身体に大きなスイカを二つ付けたような大きさのため、いやでも目立つ。
「カップはコレです」
そう言って貰い物のカップを3つ用意し、ティーポットと電気ケトルを用意する。
「おう。ありがとな、あとはうちに任せておけ」
関西圏の方なのだろうか? 一人称も珍しい。
「あ、うちの親が関西出身でさ。うちは関西生まれってわけじゃないんだけど……どうにも言葉だけは移っちゃってな……」
「個性があっていいと思いますよ?」
「こーはい。お前いい奴だな」
そう言って俺の頭を撫でようとして、つま先立ちになっても届かずプルプルとしているのが可愛い。
「せっかくいい茶葉があるんだ。入れ方ぐらい覚えておけ」
そう言うと先輩は懇切丁寧に入れ方を説明する。
「まずはティーポットにお湯を注いで、温度差が無いように十分温まったら、ティーポットの中のお湯を捨て茶葉を入れ、沸騰したお湯を入れて3分半ほど待つその時に保温のために、ティーコジーやタオルを巻いて保温して抽出するんだ。この時一度茶葉を混ぜて茶葉をこしながら入れる」
先輩はそう言いながら手際よくお茶を注いでいく。
まるで喫茶店の店員の様な手際の良さだ。
「因みに段々と味が濃くなるからこのまま二杯目を注ぐなら、ミルクティーで飲むといいぞ。二杯目をそのまま飲むと酸味とえぐみがきつくなってるからなぁ」
先輩が御盆にティーカップと俺が買ったケーキを乗せて配膳しに行く。
先輩は備え付けのソファーの奥窓側の席で、その隣にアンナ先輩が座りテーブルをはさんで、家から持ってきたゲーミングチェアに俺は座る。
「アンナありがとう」
「仕事以外でこんな面倒な事したくないんですけどね」
「まぁいいじゃない。このケーキってノエルのじゃない?」
「あ、ホントだ危なかったぁーー」
「須藤君に悪いしまたあとでね。ごめんなさいね須藤君」
馨先輩はアンニュイな表情を浮かべ、俺に謝罪の言葉を口にする。
「いえ大丈夫ですよ。お願いする立場なのはこちらですから……」
「そう言ってもらえると助かるわ……じゃぁ本題に入らせてもらうわね」
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