第2話ハローニューワールド
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
被っていた布団を腕で払いのけて、俺は慌ててベッドから飛び起きた。
じっとりとした粘り気のある脂汗で全身がびっしょりと濡れていた。飛び起きたことで、急に外気に触れた事で寒さを感じる。
悪寒がする。
気持ち悪い。
俺は自分の身体を自分で抱くようにして、肩や胸お腹をパンパンと叩きその後パジャマをめくって体の傷を確認する。
しかし体に目に見える傷は見当たらない……。
俺は安堵の感情からか、グッと疲れが込み上げてくる。
さっきのは夢だったのだろうか? それにしてはヤケにリアリティーがあった。痛みや匂い疲労感その全てに現実味があった。
しかし、実際俺の身体にキズなどは無く。アレは夢だったのだと自分に言い聞かせ安堵するが、その安心感はほんのもつかの間の事だった。
俺はとある異変に気が付いた。
痩せていた(ビール腹気味ではあったが)俺の身体は、学生時代の肥えた体になっていたのだ。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええぇぇッ!!」
俺は驚きのあまり絶叫していた。
どうやら俺は、中学三年の頃にタイムスリップしているようで、家族に怪しまれない様に自分のスマホで色々な事を検索した。
その結果この世界は、完全に元の世界と同じと言う訳ではなく。所々異なることがあった。
例えば一番大きな違いは、日本は他国からの侵略行為を受けた事だ。
それによって東北地方は、壊滅状態の被害を受けたものの、米国を始めとする同盟国の協力を得て、何とか撃退する事に成功した。
しかし戦争によって20代~40代の働き盛りの男性が戦争によって死亡したため、現在の男女比は1:4ほどであり、政治家や企業の社長の半数以上は女性が多くなっているらしい。
まぁ学生の男女比は、学校に行ってみないと判らないな……
俺の受験は既に終わっているため、幸い俺には時間がある。
俺はせっかくやり直す機会を得たのだから今出来ることを始めようと思って、先ずは本屋に行って参考書を買い漁った。
娯楽物もかなり差があるようで、この世界ではバトルロワイヤル系のFPSの人気が元居た世界より、早く到来しているようであり俺は元の世界でもやっていたこともあり興味があったので、受験後の息抜きとして購入したゲームをやり込んで一カ月もするとランキングで、上位数パーセントの猛者になっていた。
俺は今日も死んでいる間の時間に単語帳を片手に、試合が終わるまでの時間を潰していると……マッチした人のボイスチャットがオンになった。
俺はゲームで自分からボイスチャットをオンにする事は、ほとんどしないかったが相手が喋るときは付けることにしていた。おっさんでも小学生でも意思疎通のために、キータイプするよりは効率がいいからだ。
「すいませんでした……」
鈴が転がるような凛とした声質の女性の声だった。
年上だろうか? 声質からは凛とした大人の情勢のような印象を受ける。属性としては先輩や年上のお姉さん属性と言った所であろうか……。
声質から年齢を相続してしまうのは、オタクの……声ブタ( 声優オタクの別称の事 )の
「こちらこそすいません……」
俺は頭をブンブンと振って意識を切り替える。
するとニコニコとした上機嫌な声で、「うわぁ~~VC付けてくれる人全然いないんで嬉しいです」と言っていた。俺の1万円程度のヘッドセットでも心地の良い音の聞こえる。恐らくは高いマイクを使っているのだろう、ゲームの配信者の様なクリアな音質だ。
「【The_Bug_Man】……? って東京サーバーのランキング上位の方ですよね?」
女性は自身がなさそうに質問してきた。
このゲーム「The《ザ》 Pinnacle《ピナクル》 of《オブ》 Heroes《ヒーローズ》~英雄たちの頂点~」には、大まかにレート(ランク)とカジュアルがあり、それぞれ一人で優勝を目指すソロ、二人で優勝を目指すデュオ、三人で優勝を目指すトリオ、ポイントを消費して武器を購入し拠点を取り合い30対30で戦うウォーゾーン、拠点などがなく部隊単位での戦闘を楽しむアリーナが存在する。
簡単に言えば一つのゲームで複数のゲームが遊べるという訳だ。
俺はその中の一つで上位ランカーであることから、彼女は俺のことを知っていたのであろう。
「えぇそうですよ。俺の事良く知ってますね……俺見たいな半端に有名なプレイヤーの事……」
「知ってますよ! 全てのレートでランキング上位に君臨していて東京サーバーの総合ランキングで上位2パーセントの「虫の人」に会えるなんて光栄です。」
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