昔々じゃない今に……

明鏡止水

第1話

むかしむかしというほど昔でもない。

どちらかと言えば令和5年の12月28日を生きる、まあ、結婚もできず、彼氏もおらず、クリスマスイブやクリスマスは家族と過ごしたと言えば聞こえはいいが。


要は子供部屋おばさん戻りの、元一人暮らし経験者がおったそうな。ココ、まあまあ、強調しても良いじゃろ。


そのおばさんは、まあ、32歳くらいで、この間知り合いの、というと。まるで親しいみたいに感じるから知人というよりは他人に近い29歳の子が先月結婚したのを。


なんだか。


人ごと。ひとごとはひとごとなのだか。


別に羨ましくもないし、妬んでもいけないし、素敵なおしゃれな明るい人だし、社会人経験もある。

そんな若い子が結婚したことを。


そのひとりもん、名を明鏡止水とする者は。


「……いまさらながら、人の営みとは、なんじゃろな……」


と、考え始めた。


明鏡止水なんて名前を使っている割に、その頭の中は。


自分も結婚してみたい。でも知識が少なくて、おまけにオタクで隠れた浪費家。親の脛齧りに、容姿も太っている。


いったいぜんたい、世の中の人はどうやって結婚して、いやまず、お付き合いして、場合によっては毎晩若ければそりゃ、心も体も求め合うだろうし。若くなくても仲睦まじくする時もあろう。昼も夜も……。

そうなればすてきだろうし……。


そんなことを、意外と他のご家庭の子供の数で。

「何回したんだろう……」

と、かんがえながら。

不妊治療とか体外受精とかある場合もあるだろうけれど、世の中……。


世の中……。


ひとりで生きるには、ちとおかしい……。


そう、ひっそりと、寂しくはないが感じている。これはとても尊いことだと思う。


生まれつき子を望めぬ身体や人や心もあるだろう。

だが、明鏡止水は異性愛者で、詳しくは自分の性思考を分けられないが女性と結婚できても素敵だと思うし、お付き合いもいいと思う人間だ。だが、将来子供は欲しいしきっと絶対二重で唇は形良く美しいに違いない、愛らしい子だ、と想像しながら生きてきた。ただ障害や、口唇口蓋裂、死産を知らないわけではない。体感したこともないが知識だけならなんとかあった。それでも、夢は、見る。

しかし、このおなご、まるで世間知らず。物知らず。クイズ番組では地名や路線や名所や数学、音楽、英語、全滅にちかい……。


聡い女なら、まだ、自分を可愛く見せるか、キャリアを積んで伴侶もパートナーも必要なし、あるいはセックスフレンドとやらの一人や二人……。若しくは妥当な相手と妥当に、あるいは最高の相手と最高に過ごして最高を目指して生きただろう。


どんな人生がこの女には合うのか、もう、「型」はないのだ。「レール」もない。全ての人間にはただ「人」と「尊厳」が与えられる。


さて。


映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を鑑賞した明鏡止水というおなごは、ゆめをみた。


鬼太郎の父と、鬼太郎の母が出会うのを想像しようとしてみたが、Xという、ネットとやらの流れの中ではファンアートがあふれかえり、それを見逃さないよう眺めて楽しむうち、或いはつまらなく眺めるうちに自身の想像力が欠けていった。


すばらしい男女の出会い。明鏡止水はまだ夢を見ても良いと思っている。自分はまだまだ恋に恋していいはずだ。痛いと思われたら仕方ない。


特別で、惹かれ合う誰か、自分を邪険にしない誰かと出会い、その男も自分を好きに愛してくれる、自分の年齢はまだまだ、そんな年齢だと。


……精神年齢はべつとして……。


明鏡止水に出来ることは、ネット通販と、米を炊飯器で5号炊くことと、母が洗い物や洗濯干しをしている時に自分は手伝わないぞと頑なに楽をする、寄生している。そんなことだらけの。


パラサイトシングルの心境を噛み締めることだった。


毎日高い声で母親が咳をするのを、その度に怯えて震える。そんな心と毎日じゃった。


このままでいいのか。


一度だけ男と付き合ってみたことがある。

一回だけお見合いし、2回セックスして高齢処女を脱却し(脱処女という言葉はその男が使っていたのので嫌で使いたくはない)、「経験」してみたのだが。まず、顔がディズニーのトイ・ストーリーのリトルグリーンメンというエイリアンにそっくりで丸顔なのだ。なぜ選んだか。

住んでる市が同じだったのである。それだけ。


おなごは、乗り物恐怖症じゃった。

薬を飲まねばパニックになる。発作が起きる。それで世界がどんなに遠のくか……。

もう、辛い思いは嫌だ。


だから同じ市のその男にした。


ところがまあ、その男とはその3回会っただけで別れる。初めてした相手に愛着はないのか? 

と、聞かれれば全くなく、むしろ、利用した相手だ。

デートをするための相手。

してみるための相手。

だから、別れるまで明鏡止水という名の割につくづく邪心に溢れたこのおなごは、「体の相性も大事だから他の人にもお互い目を向けてみませんか? セックスフレンドのようで悪いですが」と予防線を張って、他の相手を探し始めた。


……世の中望まぬ性行為に苦しむ人たちがいる中で明鏡止水は、同じ世界に生きながら、自分の邪心ワールドを広めて世界を蝕みつつあった。

ちなみに、体の誘いはなんとLINEでした。


一刻も早くオトナになりたい!


とか、そういうので先走ってしまったのではない。


単純に。

やり取りするのも面倒だし。まだ知り合ったばかりでLINEのメッセージだけでもう、ときめかないと気づいていたからどうでも良いと思ったのだ。

そういうのはLINEでするものではないと母から言われ、友達からもどうかと思うと言われた。


しかし、自分では浅慮だとは思っていない。世の中出会ってすぐ行為をする者同士がおるではないか。よー、知らんけど。男も女も関係なく。後悔が先に立つか、後の祭りかはともかく。


相手も相手で誘いに乗るのも変だった。


男は、童貞を風俗で卒業した。らしい。

女にはなかなかできないことである。

よく知らない外国人の女性相手に卒業したので気持ちいいとか訳がわからなかったし、その後デリヘルとやらをホテルで6回くらい試したとか。


つくづく、男ってなあ……。

女にもそういうサービスあるのだろうけれど。本番のないのがあるらしい。調べてみた。


そろそろ、これくらいで終わりにするかのう。


ちなみに、男は、素人童貞だと自分で言っておった。


だから、行為も、優しくはあったが。

だんだん求めるものや、見せるホテルの「あだると」な動画がそういうサービスをする人に求める姿勢と近くなっていった。


今なら思う。

私は恋人には見られていないし、私も見ていない。

だから「要求」されている。この「提案」は、私の体を思ったり、愛そうとしてくれている努力の表れは感じられても、その道のプロに求める時のものだ。私は風俗嬢でもデリヘル嬢でもなく、貴方のお陰でなんとか経験を得た、まだほんの、ただの女ですよ。


人生で、あと何回、何人と私はセックスするだろう……。このたった一人で私の「女性」としての「性事情」は、幕を閉じるのか……。


残念すぎる。


しかし、周りの男の人は理知的で、私はとても面白い話を提供することはできないだろう。


また、ちょっとコレは変態的なのだが。どの人とならディープキスができそうか、眺めながら考える時がある。


性欲がある人なら、どの人とならセックスできるかと感性を刺激されたことがあるのでは、と思う。


……この人とは絶対無理だな。生理的に。

まあ、私、ディープキスのやり方いまだにわかんないけど……。


うーん、と考えながら。ぼっちの私は考える……。


じんせい、ひとりで生きるにはちと、さみしい。


そんな気がする。


そんなゲゲ郎ならぬ、明鏡止水郎なのでした。



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昔々じゃない今に…… 明鏡止水 @miuraharuma30

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