日本人とテレビは、何を笑ってきたのか

スヒロン

第1話 笑わせて笑い者になり

「俺はな、王と長嶋が5千万っていう時に八億もらってたんや」

 元有名芸人の島田洋七は語る。

「だんだん頭がアホになってな。完全に天狗や、番組に呼ばれなくなったのも自業自得。やから、今またテレビ干されて実家暮らしになっても、すぐにここ(番組)まで戻ってくる自信があるで」

 がばい婆ちゃんが売れた時のお馴染みエピソードだ。

 隣の顎のしゃくれた男が言う。

「あんたな・・・じゃあ、もう実家に帰りなされ」

「アホなこと言うな!」

 客らは笑う。


 島田紳助の十八番の”愛のある冷酷なツッコミ”だ。

 客も視聴者もこの頃はまだ信じていた。

「一流芸人は、ドギツイ突っ込みの中でも相手への愛情と本当の絆があるんだ」と。

 紳助が女性マネージャーをぶん殴った時、紳助は涙の会見で

「ほんまにすいません。僕の身勝手な正義感で女性を殴ってしまって・・・」

 号泣会見である。怒っていたはずの記者たちも、すでに取り込まれている。

 というか、ウソ泣きでは無く本当に号泣しているのだから、当然「加害者」であっても、少し同情してしまう。


 そして謹慎中に代役を務めていた東野らは、まだ今ほどの「司会の腕」では無かったのもあり、"話術の天才"紳助はすぐに復帰して、あっさりと頂点に返り咲いた。

 その後、暴力団との繋がりが明らかになるまでは・・・


 そして、顎がしゃくれた話術の天才は、あっさりと引退した。

 その後、名物番組だった「ヘキサゴン」は実はレギュラーの女性タレントが紳助の愛人だったことや、馬鹿が取り柄のタレントが、分かるはずのクイズを「わざと馬鹿に見えるように答えろ」と指示されていたことが次々に発覚していった。


 思うと、日本のテレビ=お笑い界はずっとこれの繰り返しだったのかもしれない・・・


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