考える人々

黒田 望

第1話部活について考える

 ここは考思高校。今日は部活動体験日で1年生は気になる部活を体験しに行っていた。そして佐倉哲もその1人だった。運動はてんでダメな哲は特にやりたい部活なんてなかったのでとりあえず文化部にしようと考えていた。配られた部活動紹介プリント眺めていると思考クラブという字が目に止まった。横には部員2人とある。人が多くごちゃごちゃしているのが苦手だった哲はそこに行ってみることにした。考思高校では部活動体験の時間がとられているため、部活に入る気が無い人も体験をしなければいけなかった。そのため哲は時間が潰せればそれで良いやと考えていた。

思考クラブは学校の端にある何とか準備室くらいの大きさの空き部屋だった。その前まで来るとポスターが貼ってあるのが見えた。

「至高の思考を目指し思考を志向させる嗜好の場!思考クラブへようこそ!」

哲はポスターを横目に見ながら教室のドアを開けた。

「あ、丸ちゃん体験来たよ!」

そこには2人の女子部員がいた。丸ちゃんと呼ばれていた方は身長が高く長髪で凛々しい感じで、もう1人は背が低く短髪で可愛らしい見た目だった。

「ようこそ新1年生!私は久住丸。このクラブのクラブ長をしている。2年生だ」

「私は富来兎!同じく2年生!兎ちゃんって呼んでね!」

「俺は佐倉哲です。まだ部活に入るかどうかも決めていないんですが、よろしくお願いします。久住先輩、兎ちゃん先輩。ところで、ここは何をする部活なんですか?」

「ここは文字通り思考をするクラブだ。そして部活ではない。あんなものと一緒にするな」

丸は不機嫌な口ぶりになった。

「丸ちゃんは思考クラブの人数が少なくて部活に出来ないから部活を僻んでるんだよ。部活にできれば顧問もついて部費も出るんだけどねー」

「別に僻んでいるわけではないが、アイツらが裏金を不正受給しているのが許せなくてな」

「久住先輩、部費は綺麗なお金ですよ!て言うか、部活って最低何人必要なんですか?」

「5人だ。だから佐倉くんが入ろうが部活にはならないから無理はしなくてもいいぞ。まあ、新1年生が1人も入らないとこの活動も来年で途絶えてしまうんだがな」

「丸ちゃんと2人で頑張って繋いできたけど。もうダメだね。卒業していった先輩達にも顔向け出来ないよ」

2人は哲をチラチラと見ながら言った。

「お2人にそんな思いがあったなんて。わかりました。じゃあ俺もこのクラブに入ります!」

「ほんと!?じゃあこの紙に名前とクラブ名書いてくれる?」

哲は渡されたペンで入部届けに記入した。

「じゃあこれは兎が持って行ってあげるね」

「ありがとうございます。それにしてもこのクラブいつからあるんですか?」

「え?今年からだけど?」

「え?じゃあ卒業していった先輩は?」

「……じゃあ明日からも頑張ろー!」

こうして哲は何をするかもよく分からないクラブに入ってしまいましたとさ。

めでたしめでたし

続く

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