【短編小説】生きていく理由
@miraikun
理由が出来た
生きていくってのはとはなんだろう。
個人的に生きていくってのは理由を追いかけながら作ることだと思う。
特に腹が減ってないけど食べ物を食べる時もあるけど、でもその食べ物が食べたいから食べる理由があるみたいに。
言っておきたいのは理由は必ずしも重い理由である必要はない。
さっき言った通りに、ただ腹が減ったからご飯を食べたいっていう理由が出来たとかみたいに軽い理由でもいい。
でも今の僕にはその生きていく理由が何も無いかも。
特に何もしたいことがない。
「これで今日のホームルームは終わりです。みんな家に帰る時には車など気を付けて帰ってきてくださいね。」
授業の終了を知らせる先生の声が聞こえた。
僕が集中せずに考え事をしている間に終わったのか。
今日もまた変わらない日常が終わった。起きたら学校に行き今から家に帰ったら寝て明日起きたら学校に行くだろうな。
「帰るか…」
また考え事をしてたらクラスのみんなが帰り一人で教室に残っている。
一緒に帰る友達もないからこうやって一人で残ってても誰も”帰ろう”って声を掛けてくれない。
特に友達がいないことをそんなに気にしてはないけどたまに言葉では説明できない寂しさみたいなのを感じる。
「帰ったらちょっとPC触って寝るか。」
特に行きたい場所がいるわけでもないし、友達もいないから友達と遊びも行かないからすぐ家に帰ることになる。
まあそもそも外に出て遊ぶ性格じゃないからいいけど。
「お風呂は後でいいや。」
家に帰りすぐカバンをおいてパソコンを付けた。"ただいま”も言う必要はない。親はいつも遅く出勤して朝に帰って来て寝てる。
だからお風呂もお湯の用意とか順番もいらない。僕が入りたい時にすればいいから。まあこれも便利だからいいけど
「なんか面白いゲームないかな。」
○TEAMを開いて適当にやるゲームを探してみている。
友達いないくせにシングルゲームはしないからマルチゲームで探しているんだけどね。
「あ、これ無料になったのか。やってみようか」
前有料ゲームだったゲームが今無料で配布していた。
興味はあったけど値段が少しあって触れなかったからラッキーって感じ。早速設置して起動した。
ジャンルはバトルロイヤルで4人まで一緒にできるようだが、一旦人が多くてもよくわからなくなりそうで、味方が一人しかいないデュオモードで始めた。
「最初は武器は持たずに拾って戦うのか。」
そうやってゲームを理解していく途中に声が聞こえた。
「あの…あっちに行きませんか?」
「(びっくりした。ゲーム内からの声か…)」
可愛い声をした女の子が自信のなさそうな声で言ってきた。緊張しているのか声がちょっと震えてた気がするけどまあいいか。
急に人の声が聞こえてちょっとびっくりしたけど彼女の言葉に答えた。
「いいですよ。ついていきます。」
ちょっと硬く返事しちゃったのかな。とか思いながら彼女について行った。
「マジかよ!敵の数ヤバすぎ。倒れてちゃった…起こしてくれません?」
「……」
彼女について行った先の場所で一人で前に行きすぎたのか敵が多くてやられてしまった。
彼女は特に返事はせずただ敵にやられた僕を助けに来てくれた。
「あっ!」
しかし、惜しいことにも彼女も敵の数が多すぎたのか彼女もやられてしまった。
「惜しい。ありがとうございました。」
「ありがとうございました。すみません…」
全員やられてしまって試合が終了し、ロビーに戻った。
ロビーに戻ってからちょっとぼんやりと考え事をした。
このままゲーム終了して寝てもいいけど、可愛い声に惹かれたのか、さっきチームだった彼女ともっとゲームしたいと。
気づいたらいつの間にか彼女にフレンド申請を送った。
送った後フレンド申請受けてくれるか心配したけどその心配が馬鹿らしいくらい早く受けてくれた。
「さっきはどうも。楽しかったです。」
「私も…楽しかったです。」
「もっと一緒にゲームしたくてフレンド申請送りました。」
"もっと一緒にゲームしたくて"とか女の子に相手に何気に恥ずかしいこと言っちゃった気がする。いや、そうでもないか?思いすぎかな。
普段は自分から関係を進もうとしなけど、なんでなのかこのままで終わりにしたくないっていう気持ちが強くて勇気を出して喋り続けた。
「そうだったんだ。」
「このゲームはよくやっているんですか?」
「はい。一人でよく。」
「このゲーム今日が初めてで。やってて楽しいと思ったんですよ。でも一緒にやった方が楽しそうだし、もうちょっと一緒にやりません?」
すみません、嫌ですみたいな返事が帰って来ないで欲しいと思いながら緊張してた。
「すみません。」
ああ、やっぱり。
「今日はもう終わるので明日どうですか?」
「え、はい!いいですよ。」
否定だと思っていた答えが肯定に帰って来て変な声が出た。
「じゃあ明日も7時くらいに入りますね。また明日です。」
彼女はそう言ってゲームを終了した。
何年ぶりだろう。明日誰かと遊ぶ約束をした。
なんだ。友達いないことに気にしてないって考えてたのに結局僕も友達が欲しかったんだな。でないとさっき勇気を出してあんなことを言ったりしないし。
自分の中で何か変わる気がした。
☆
今日も昨日と特に変わらない学校生活を送って家に帰ってきた。実は家に帰って来ても学校生活みたいに何も変わりないけど。
家に帰って来たら、制服を脱いで洗濯機に入れて回す。その後はシャワーしてPCつける。それで腹が減ったらご飯食べて減って無かったら食べずにそのまま寝る。それくらい。
でも今日の夜だけはいつもとは違う。夜7時くらいから昨日出会った彼女とゲームの約束をしているから。
彼女ともっと親しくなりたいけど、どんなことを聞けばいいのかな。あるあるの質問の好きな食べ物はなにか、動物は猫と犬どっちがとか?
いや、それは社会人の人付き合いみたいっていうかなんか違う気がする。
でも実際に顔を合わせて喋るんじゃなくてネットでだし、多少そうなるのはしょうがないのかな。
それより先に今日彼女に会ったら連絡先聞いてみないとな。
7時くらいに入って来るって言ってたけどいつ来るかちゃんと分からないし、もし来れない時に連絡出来ないとずっと待つことになるしね。
別に変な目的じゃない。本当に友達としての連絡だけだから。まあ…もっと仲良くなりとは思ってるけど。
「お待たせしました!やりますか?」
また考え事をしている時にいつの間にかゲーム内から彼女からのメッセージが来ていた。メッセージが送られた時間から気づいたのはそう遅くなかったみたいで一旦安心してメッセージを返した。
「はい!やりましょう。」
☆
「今日もたのしかったですよね!」
「そうですね。最後まで2人生き残れてよかったな。」
二人でゲームいっぱいして疲れたから、一旦終わってちょっと雑談する感じになった。
ゲームの中でずっと話すものちょっとあれですよねってことで○iscordのIDを教えてもらって個人通話で話している。
連絡先はこっちから聞こうかなと思っていたけど先に向こうから言ってきてくれて助かった。でも○ineでもないし○iscordくらいだと連絡先には入らないのか?まあ、連絡できる手段ではあるからいいか。ほぼ初対面なのに○ine教える人はいないしね。
「そういえば、今日はちゃんとと喋るんですね。」
「どいうことですか?」
「いや、昨日初めて会った時にはめっちゃ緊張している人みたいに喋ってたから。」
「私、人見知りで。ちょっとでも仲良くならないと緊張しちゃって。」
「そうなんだ。」
昨日知り合ったばっかなのにもう仲良いと思ってくれているのか。嬉しいな。
でも思いすぎるのはダメだ。知り合ったとは言え昨日知り合ったばっかで、仲良いと思っているのもゲーム仲間としてだと思うし。
ちゃんと仲良くなりたいなら、これからもたくさん遊ばないと。
「そういえば、猫とか好きですか?この前取った猫の写真があるんですけど。」
と言いながらこの前家の周りで取った猫の写真を個人チャットに送った。
急にこんな話してよかったのかな。友達にみたいな感覚で人と話すの久しぶりすぎてこれで良かったのかって思ってしまう。
「えー!可愛い!」
「でしょ?」
よかった。変に思われてはなさそう。
「でも、私猫より犬が好きなんですよ。ゴールデンレトリバーみたいな大型犬。猫も好きなんですけど犬の方が私のことが好きなんだなって事が分かり易く伝わるのが好きで。」
「あー、分かります。おばあちゃん家の犬もそんな感じだし。」
「あっ、もうこんな時間に。」
「もう寝ます?」
「はい、また明日もやりましょうね。おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
通話終了した後時間を見ると時計の針が12時を指していた。彼女と話すのが楽しすぎて僕も時間の流れに気づいてなかったな。たしかに大分遅い時間になっている。
明日も早く家に帰って来て彼女と遊びたい。
ふと思うと、この二日の間いろんなものが変わった。
機械的な日常を送ってきた僕にまだゲーム友達くらいだけど友達が出来た。
彼女とのゲーム約束があるから学校が終わったら早くて帰るし、お風呂もご飯も適当にするんじゃなくてちゃんと早く入って食べて約束の時間に間に会うようにする。
これで僕は彼女に会うために生きていく理由が出来た。
【短編小説】生きていく理由 @miraikun
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