宇宙(そら)の果ての裂け目から
闇之一夜
宇宙(そら)の果ての裂け目から
宇宙(そら)を手づかみし
こぼれ落ちる星をキャンディに
舐めるより早く
噛み砕いてしまったこの苺味を
おまえはあっというまに
すべてのゾンビーたちのための
滑走路にしてしまったか
知っているよ
地球以外はみな死人
息も欲望もなく
決まった航路を、
ただぐるぐる回る
終わりまで
いえいえ
宇宙人はいますよ
ただ遠すぎて
絶対に会えないだけで
まるで俺と彼女じゃないか
俺という男と
全ての女のことじゃないか
ついでに男にも会えない
もっと言うと
俺自身にも会ったことがない
鏡に映る誰だおまえは
そのうち向かい合わせたように
無限に並んで宇宙になる
手を突っ込むと星の海
腕だけ溺れ死んでも
ミロのビーナスには
生まれ変われない
ついでに腰から下もない
頭を突っ込むと
俺の知らない俺の顔どもは
あわてて逃げ出して
知らん顔をする
こっちもおまえらを知らないから
この戦争は引き分けだな
「バカ言ってんじゃねえよ」と
首が抜けなくなって
棺おけにも片足と
片首を突っ込んだまま
そこで分かったのは
全ての鏡は
空の果てにつながっていること
ほら見えるだろう
聞こえるだろう
宇宙(そら)の果ての裂け目から
なだれ落ちるソラの外側が
あの風が
あのひっでえ面がまえが
どんなに醜くとも
ゾンビを見れば誰だかわかる
すぐわかる
いいえ、ゾンビはいますよ
ただ催眠術で仮死状態の
インチキなだけで
まるで俺の本性じゃないか
だから俺の気持ちを墓に埋めて
二度と甦らないよう
鋼鉄の扉でふさいだのさ
だけどこんな満月の晩は
墓場から
殺してしまった俺の
アイシテルのうめきが聞こえる
片仮名だから誠意がなくて
すぐバレるのは変わらず
やめろ 通るな
なんでそう
タイミングよく通りかがるかな
骨までさみしい闇夜の奥で
墓地の塀からひょいと覗く
あなたの完全にバカにしまくったニヤけ顔
俺はゾンビのように滅んでいくさ
宇宙(そら)を手づかみし
こぼれ落ちる星をキャンディに
舐めるより早く
噛み潰してしまったこの苦虫は
宇宙(そら)の果ての裂け目から孤独
宇宙(そら)の果ての裂け目から 闇之一夜 @yaminokaz
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