料理スキルが思ったより便利すぎるので、とりあえず腹満たして無双しようと思う
かいり
空腹死
腹が痛い。
ただでさえ腹が減っているのに、まだ仕事が死ぬほどあると思うとどんどん痛くなってくる。
なんで俺だけ残業をしなきゃいけないんだ。そう思いながら鞄に入っている絶妙に不味いエナジーバーを頬張り、空腹を紛らわせる。
昨日の昼飯も確かエナジーバーだったな。うちに帰ったらちゃんとしたものを食べねば。確か昨日の冷凍ハンバーグが残っているはず。もちろん、自分で作った物ではない。
いつか料理でも習うかー、といつも思うが一生習うことはないだろう。大体そんな時間はない。
昔一度だけ料理をしたことはある。ちゃんとレシピ通りに材料を入れたはずなのに、どうやってか不味くできたのはレシピのせいだと思いたい。まあとにかくそれ以降俺は料理をしたことがない。
そんなことを思っているとさらに腹が痛くなってきた。
俺が頭の中でトイレに行くか我慢するかを密かに考えていると、昼休憩を知らせてくれるスマホのアラームが鳴った。
もうそんなに経ったのか?まあいいや、とりあえずトイレに行こう。
俺は腹を刺激しないように静かに立ち上がった。その瞬間...
あれ?眩暈がする。眩暈がするほど腹が減っているのか?
そしていきなり地面が目の前に現れた。
一瞬俺は何が起こったのかわからなかった。だがすぐに倒れたことが分かり、立ち上がろうとした。
ん?体に力が入らない。
腹が減りすぎたのか?もしかして過労か?もしそうなら上司に文句を言おう。そう思いながら立ち上がろうと努力をする。
だがその努力もむなしく、体はピクリとも動かない。
まずいな、こんな時間に誰かがいるとは思えない。助けを求めようにも求められないじゃないか。
頭の中でどうしようかと考えを巡らせているとだんだん目の前が暗くなってきた。
死という考えが頭をよぎる。
こんなにあっさりと死ぬのか?腹すら満足に満たせないまま?いやだ、誰か助けてくれ!!
叫ぼうとするが声が出ない。
色々な思考が俺の頭を埋め尽くす。これが走馬灯というものなのか?
待てよ、ここで死んでも別によくないか?
32歳、非リア歴イコール歳、収入も特に大したこともない。なんなら人生やり直したほうが得では?
いや、ダメだ。家族が悲しむ。一年間実家に帰ってないんだ。
あ、いやでもどうせ帰ったところで家の手伝いなんかをやらされるんだろうな。
そうこう考えているうちに俺の視界は完全に真っ暗になった。
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