第41話:貯蔵と大宴会

2年目の春


 丸1日、陽の出から陽の入りまで穀物醸造酒を造り続けた。

 造った酒は、魔境神が造ってくれた酒カメに入れて避難村に転移させた。

 雑菌が入らないようにして、冷暗所に保管した。


「大気よ、100年保存できる安らかな風となれ!」


 ここで造った保存用の酒は、火入れしなくても100年は保管できると思う。

 普通にしていても、清酒なら100年保管できるだろう。

 だが、エールやラガーではそこまで保管できない。


 それを保管できるようするには、真空パックするなどの手段が必要だ。

 普通なら前世のような機械が必要なのだが、ギフトでできてしまった。


 真空パックのような保管は、酒カメだけではない。

 酒カメを保管する倉庫も同じように真空パックできた。

 二重に真空パックされたら1000年間保管できるかもしれない。


 金猿獣人族の人数を考えれば、1000年間は飲み続けられる。

 万が一、避難村に逃げる事になっても食糧に関しては安心だ。

 それだけの酒を1日で造った。


 翌日は村全体を休みにした。

 魔境神はヘロヘロになるまで魔力を使っていた。

 だけどがんばったのは魔境神だけじゃない、村人全員ががんばったのだ。


 がんばった村人たちのために大宴会をした。

 料理妖精や給仕妖精に負担がかからないように、前日は休んでもらっていた。


 避難村での収穫には参加させなかった。

 大宴会でがんばってもらうのが分かっていたからだ。


 ぶれいこうと言われる身分を忘れた大宴会。

 飲み放題食べ放題の大宴会。

 普通は明日の事を考えて飲み過ぎないようにするのだが、明日もお休み。


「白トリュフソースをかけたプレーンオムレツが食べたいです!」


 俺がオムレツを作っていると妖精族が並び出した。

 

「私はベーコンオムレツが食べたです」


 俺の所に並ばなくても、隣にいる料理妖精の方が上手だと思うのだが?

 たしかに、家庭料理程度しか作れない俺のオムレツが食べたいと言ってくれるのは、とてもうれしい。


 だけど、妖精族だけに料理を作るとエコヒイキになってしまう。

 少数なら問題ないのだが、種族全体が集まるとエコヒイキだと思われてしまう。

 一部の種族が食べられない料理は問題がある。


 村長は村人に公平でなければいけない。

 金猿獣人族も食べられる料理にしないといけない。


「すまない、待ってくれ、村人全員が食べられる料理にする。

 悪いがオムレツは交代してくれ」


 俺は列を作って並んでくれている妖精族とキンモウコウに謝った。

 隣でオムレツを作っていた料理妖精にも謝って、後の事を頼んだ。


「こっちを手伝わせてくれ」


 俺はフルーツパフェを作っている料理妖精に声をかけて加わった。

 フルーツパフェには、エンシェントトレントの果物がたくさん使われている。

 果物は金猿獣人族の大好物だし、妖精族もキンモウコウも大好きだ。


 フルーツパフェには乳製品の生クリームやアイスクリームが使われている。

 村人全員が大好きだし、元が乳なので草食の種族でも食べられる。

 今もうれしそうに山盛りのフルーツパフェを食べている。


 果物や穀物が大好きな金猿獣人族なのだが、なぜか卵が好きなのだ。

 だからフルーツパフェにプリンを加えてもよろこんで食べる。

 卵を使わない豆乳プリンも用意したのだが、必要なかった。


「村長はこっちにいるぞ、先にデザートを食べてから肉を喰おうぜ」

「しめのフルーツパフェも良いが、パフェを肴に飲む酒も美味いぞ」

「両方一緒に食べればいい」


「そうだな、甘いパフェを肴にウィスキーを飲むのも美味しい」

「いや、いや、パファが肴ならブランデーだろう?!」

「何を言っていやがる、パフェにはウオッカが1番合うだろう?!」


「こら、こら、こら、ケンカをするな。

 人の好みに口を出すなと言っているだろう?!


「すみません、つい熱くなってしまって」

「すまない、村長、つい美味しい飲み方をしてもらいたくて」

「申し訳ない、村長、ウオッカの美味さを広めたくて、つい」


「悪いと思っているならもう良いぞ、自分の好きな組み合わせで飲んでくれ。

 子供たちがやって来たから向こうで好きなだけ飲んでいてくれ」


 俺がそう言うと、顔だけ知っているエンシェントドワーフたちが移動した。

 互いの肩に腕を回してご機嫌な顔をしていた。

 酒精の強い酒をフルーツパフェにかけて食べている。


「村長、モモ、私はモモとプリンとアイスのパフェが食べたい」

「私はブドウ、ブドウとプリントとアイスのパフェが食べたい」

「私はビワとブドウとレイシがいい、それにとけかけたアイスをかけて」


「ずるい、とけかけのアイスをお願いするなんてずるいよ!」

「ずるくないもん、村長はどんな食べ方しても好いって言っているもん」

「じゃあ、私もとけかけのアイスにして」

「私も、私も、私もとけかけのアイスをかけてほしい!」


「分かったけど、もう作り終わったから、普通のアイスの上からかけるぞ」


「やった~、普通のアイスととけかけのアイスだ!」

「私も同じのがいい、普通のアイスととけかけのアイスが好い!」

「わたしも、とけかけだけじゃなくて普通のアイスも入れて」


「さわがなくても好きなパフェを作ってあげるから待っていなさい」


「「「はぁ~い」」」


 3人の子供にパフェを作ってあげていると、俺の前に列ができはじめた。

 隣の料理妖精が作ったパフェではいけないのか?

 料理にプライドを持っている料理妖精の視線が痛いのだが……

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