第27話:マーダビーと砂糖原液
「大地よ、俺を助けてくれる全ての巨樹が必要とする豊かな地となれ!
俺を助けてくれる草よ、最高に美味しいサトウキビに成れ」
俺がギフトを使ってお願いすると、見渡す限りのサトウキビ畑となった。
巨樹は余りにも大きいので、互いのじゃまにならないように間隔がある。
根はからみ合っているが、枝葉は重ならないようになっている。
その巨樹と巨樹の間にサトウキビがみっしりと生えた。
俺の願いを聞いて、雑草が毎日色んな穀物や野菜に成ってくれる。
遺伝子がどうなっているのか考えるのは止めた。
「大地よ、俺を助けてくれる全ての巨樹が必要とする豊かな地となれ!
俺を助けてくれる草よ、最高に美味しいサトウダイコンに成れ」
サトウキビ畑にした反対側にサトウダイコン畑を作った。
茎の硬いサトウキビを収穫するのは結構大変だ。
硬いサトウキビを切るのはもちろん、砂糖にするために絞らないといけない。
サトウキビは農民妖精が主になって収穫してくれた。
専用の絞り器はエンシェントドワーフが直ぐに造ってくれた。
甘い砂糖などいらないが、ラム酒には凄く興味があるようだ。
サトウダイコンは主にキンモウコウが掘り返してくれた。
強力な前足で楽々と掘り返してくれた。
これでサツマイモもジャガイモも楽に収穫できる。
サトウダイコンからはビート酒を造る。
チェコではトゥチェマクという名称で呼ばれていたと思う。
日本でも農業関係の独立行政法人が試験醸造していたはずだ。
「無理に酒精が強いだけの不味いお酒を飲もうとは思わないわ。
雑味が強いお酒も、クセの強いお酒もいらない。
甘くて美味しいモモワインがあれば良いわ」
サ・リのモモ好きは酒の好みにも影響しているようだ。
金猿獣人族の大半がモモ好きだから、種族的な好みかもしれない。
「私もモモが大好きですわ。
でも、他の果物のワインも美味しいと思いますわ。
肴に合わせてワインを変えたいですわ。
最近では、果物の蒸留酒に果物のジュースを加えるのが癖になって……」
聖女ジャンヌは浄化魔術でとても良く働いてくれている。
マヨネーズをベースにしたソース造りには欠かせない存在だ。
だが聖女を名乗るなら、常に酒の臭いをさせるのは止めた方が良い。
「クセがとても強いお酒ですが、人間界のお酒に比べればとても美味しいです。
酒精もとんでもなく強いですから、人間の国に売りましょう」
料理精霊のシェイマシーナは、ラム酒やビート酒を飲む気にも、料理に使う気にもならないようだ。
確かに甘くて美味しいお酒なら、果物から造ったワインがいくらでもある。
各種のフルーツワインの方が、ラム酒やビート酒よりはるかに美味しい。
余りにもクセが強く雑味も多いお酒を無理に飲むよりは、売って必要な物を買う代価にした方が、村全体のためだと思っているのだろう。
「いや、止めてくれ、売らないでくれ。
クセが強いし雑味もあるが、これはこれでとても美味しい。
皆が飲まないのなら、どれだけ酒精を強くできるか試したい」
ヴァルタルには、クセも雑味も酒を楽しむ1つの味なのだろう。
1人でも好きな者がいるなら無理に売ろうとは思わない。
酒にする前の穀物や果物を売るだけ十分な収入がある。
「村長、マーダビーが、巨樹のミツだけでなくサトウキビとサトウダイコンを絞った汁を分けて欲しと言っています。
分けてくれるなら、集めたミツの半分をハチミツにして渡すと言っています」
「別にかまわないが、今は巨樹ごとに縄張りを決めているのだなよな?」
「はい、巨樹はとんでもない大木なので、1人に複数の女王ハチが巣を作れますが、今は巨樹1人に女王ハチ1人になっています」
「巨樹によって咲く花が違っているから、女王ハチごとに味わいの違うハチミツが作られているのだよな?」
「はい、本当に美味しいハチミツが作られています!
これまでマーダビー作っていたハチミツも美味しかったですが、村長が成長させられたエンシェントトレントの花のミツを集めて作ったハチミツは、別格です!」
「だったら、サトウキビの原液とサトウダイコンの原液を集めるマーダビーは、他の花のミツを集めさせないようにしよう。
そうすれば新しい風味のミツが手に入る」
「すばらしいですわ、どのようなハチミツができるのか楽しみです!
え、なんですって、そんな勝手な事を言って!」
シェイマシーナがマーダビーの代表と言い合っている。
何か問題でもあるのだろうか?
いや、待て、何も1つの花に限らなくても良いよな。
これまで通り1つの花のミツを集めるのは続けてもらうが、複数の花のミツをブレンドしたハチミツも試してみたい。
「村長、マーダビーが多くの花を集めたハチミツを作りたいと言っています。
これまでは女王ハチごとに作ったハチミツを交換して楽しんでいたそうです。
これからは、いくつかの花のミツを合わせたハチミツを作りたいそうです」
「そうか、俺も今その事を考えていた。
ウスターソースやとんかつソースのように、多くの果物や野菜を合わせて発酵させたらとても美味しくなる事もある。
ハチミツも同じだ、いろんな花のミツを合わせた方が、これまで食べた事がないくらい美味しいハチミツができるかもしれない、やらせてみよう」
「はい、分かりました、村長の許可が出ました、好きにやりなさい。
ですが、これまで作っていたハチミツは、これまで通り作りなさい。
あなたたちが作ったハチミツをとても楽しみにしている者がいるのです」
そうだった、シェイマシーナはハチミツをたっぷりかけたパンケーキが大好物だ。
シェイマシーナはずっと他人の料理を作ってくれている。
シェイマシーナに、生クリームとバターとハチミツをたっぷり使った、特別製のパンケーキを作ってあげよう。
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