エラとターリア、だいたいペルシネット
暖炉の灰がそこかしこ 棘のある蔦がうねうねと
少女は眠る 健やかに 夢の中ではおおはしゃぎ
誰気兼ねなく 鼻提灯 いびきもぐうすか はしたなく
それでも誰も 咎めない 微笑んで見る 少女の微睡み
幸せそうに眠るふたりを見て、ペルシネットは微笑みました。ほんのすこしの間だけ。
「どうしてなのですか!?」
どこへも向けられないいきどおりを叫びます。微笑みこそ消えていますが、べつに怒っているわけではありません。
「わたしのいない間にパーティーでもしてたのですか! ずるい! 呼んでくれればいいのに!」
いいえ、違うわ違うわ。そうペルシネットは自分に言い聞かせます。
「なにがどうなったら一晩でこうなるのですか! どうしておふたりはそんなに幸せそうに眠っていられるのですか!」
これだけ大声を出しても寝返りのひとつもせずに眠りこけているふたりへ、ペルシネットは歩み寄りました。足の踏み場もあまりなかったのですけれど、なんとかつま先立ちで進みます。眠るふたりの女王さまを見るにペルシネットは、あら、本当に幸せそうですね、と、そう思ってまたすこし、微笑みます。だけどやっぱり、それはほんのすこしのあいだだけでしたけれど。
「どうして毎日毎日、わたしのお部屋で寝てるのですか。はあ……」
どうせ言っても、ずっと眠っているふたりには聞こえていません。だから諦めて、ペルシネットはうなだれます。
でも気丈なペルシネットは、ふたつの握り拳を作ってすぐに気持ちを切り替えました。黄金でできているかのように美しく、そしてどこまででも続くように長い自分の髪をぎゅっと握って、その毛先を床におろします。つまり、ほうきのようにかまえました。
「今日もお掃除からはじめないとですね。それが終わったらお掃除して。そしてまたお掃除を……」
言っていてペルシネットは、なにかがおかしいということには気づけたのですが、それはけっきょくなにがおかしいのか、ということに気づくまでにはいたれませんでした。首をかしげている暇もありません。今日も朝から晩まで、お部屋のお掃除がたまっています。
ペルシネットは幸せそうに眠るふたりをわき目に、灰と茨を掃きはじめるのでした。
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