第8話

「じゃあテール、早速君に動画の手伝いを頼もうか」

 朝食の時間、魔王がテールに親しげに言う。魔王の発言にテールが首を捻った。

「動画の手伝いといわれても、具体的に何をすればいいんだ?」

「アイデアを出してくれればいいんだよ!何かないかな?」

 魔王はおもちゃを貰った子供のようなテンションでテールに聞いた。しかし何もない所に振って湧いてくるアイデアなどあるわけもなく、テールの頭を悩ませた。

「魔王様、テール様が困っています。いったん落ち着きましょう」

 そんな興奮した様子の魔王をマリアが宥める。

「うん?そうなの?」

 魔王はマリアの言葉を聞き、テールに確認をする。テールはうんうんと頭を頷かせて答えを返した。

「うーん、困っているなら仕方ないかもしれないけど、テールには僕の動画を手伝って貰うという約束だからね。アイデアを出してもらわないと困るよ?」

 魔王はマリアに言う。マリアがテールに視線を向けながらも回答を返す。

「はい、テール様も動画を手伝うことを承知しています」

「あぁ、確かにその通りだ」

 テールはマリアの言葉に頷いた。

「ですのでここで私のアイデアを」

「話してみて」

 マリアが自分に考えがあるという。魔王はそれを聞こうと回答して、マリアの言葉を待つ。

「はい、テール様はまだ動画の素人です。ですので、まずは勉強からしてもらうのはどうでしょうか?」

 マリアの提案は真っ当な意見であり、魔王も確かにそうかもと考える素振りを見せる。

「俺だって勝手が分からないんだ。アイデアも知識がないと浮かんでこないだろ?」

 テールはマリアの提案に便乗するように魔王に言葉をかけた。魔王はテールの言葉で自身の中で納得が言ったのだろう。頷きながらテールに話しかけた。

「うん、確かにマリアの言うとおりだね。じゃあテール、道具はこちらで用意をするから、その道具を使って勉強をしてもらおうと思う。使い方はマリアが教えるから大丈夫だよ」

 魔王はそういって朝食に口をつけた。テールも魔王に便乗するように朝食をいただく。シンプルな目玉焼きとパンという、ごく一般的な朝御飯だ。

「なぁ、仮にもお前は魔王だろ?魔王の朝食がこれでいいのか?」

 テールは思わず魔王に聞いた。

「うん?何が?」

 魔王はテールが何を聞いたのか理解していないのだろう。首をかしげている。

「いや、魔王なのに質素な朝御飯だなぁと」

「なるほど。でも、気にしたこと無いから分からないよ」

 魔王が首を捻る。そんな様子の魔王の変わりにマリアが回答する。

「魔王様は食に関心がないわけではないのですが、まず文句を言いません。ですので、私がバランスを考えて用意をしているのです」

「あぁ、全部マリアが用意しているのか」

「えぇ、素材にこだわり味にこだわっています。では冷めないうちに食べきってください」

 マリアはそういうと魔王のカップにお茶のおかわりを注ぐ。

「うん、ありがとう」

 魔王はマリアにお礼の言葉をかけ朝食に戻った。それから少しの会話はあったが特に何もおきることなく、魔王とテールは朝食をおかわりして終わったのだった。

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