第4話

 ウキウキと廊下をスキップしながら進む魔王に、後ろから声が掛けられる。

「魔王様。本当によろしいのですか?」

 魔王に声を掛けたのはマリアだ。

「何がかな?」

 魔王はマリアに対して聞き返す。マリアは言葉を続けた。

「仮にも彼は勇者ですよ?誘ってもよかったのですか?」

「あぁ、彼の事ね」

 魔王はテールの事を意識していなかったようで、マリアの言葉で思い出した後に思い出した。そして魔王はマリアの言葉に納得したように頷いた。

「彼をもてなしたマリアが言えるセリフではないと思うんだけど」

 魔王は振り返りジト目でマリアを見た。マリアはそんな様子の魔王を気にした様子もなく受け流すと、魔王に再び問いかけた。

「私は別にいいのです。魔王様こそ、よく彼を城に置いておくと決めましたね」

 彼を信頼してないのにという意味を込めたマリアの言葉だ。

「そうだね。僕自身、彼のアイデアは面白いと思ったんだよ。だから使える者は使うんだ」

「もし彼が裏切ったら?」

「その時はその時だ」

 はぐらかした様な回答だが、魔王の表情は決意を物語っている。テールを魔王城においておくリスクと責任を理解しているということだろう。

「所で、マリアはどうして彼をもてなしたの?」

今度は魔王がマリアに聞く。

マリアは楽しそうな表情を見せながら魔王の回答に答えた。

「だって私、彼の事を気に入ったのですから」

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