ザコがゆく
烏目 ヒツキ
人外のいる世界
路地裏で拾いもの
寒い日の夜だった。
飲み街で日本酒を浴びるように飲んだら、気分が悪くなったのだ。
人前で吐くわけにはいかず、オレは路地裏の方に避難した。
血の気が引く感覚。
何度味わっても、慣れやしない。
まさか、おちょこ3杯分で酔いが回るとは思わなかった。
「んぶぇっ!」
汚くて申し訳ないが、隅に吐いてしまう。
一通り、胃の物を吐いてしまったオレは、何気なく路地裏の奥を見た。
路地裏には、ゴミ袋が積み重なっていた。
中には、捨てた食材などがパンパンに入っていた。
そして、袋の上には、ゴミではないものが置かれている。
「はぁ、はぁ、……んだぁ?」
ぼやける視界の中、オレは壁に手を突いて近寄る。
ゴミ袋の上を見たオレは、衝撃を受けた。
「……おい。嘘だろ」
女の子だった。
小学5、6年くらいの。
細くて小さな手足。
白い肌は痣ができていて、誰かに殴られたようだった。
路地の奥と後ろを見て、誰もいない事を確認する。
「おいおい。殺されてねえだろうな」
少女の肩を軽く叩き、「おい」と声を掛けた。
念のため、首筋に手を当てて脈を計る。
「生きてるな。……ん?」
酔いが回っているせいか、遅れて気づいた。
なんか、この少女。どこか変だ。
ボロボロのシャツにジーンズを履いている。
服は汚れているが、問題ない。
ただ、片手が人のそれとは異なっていた。
真っ黒に染まっており、手の形が丸みを帯びていた。
見た感じ、黒いコケが生えている風だ。
手の先端には、針が付いていた。
針と根っこの接合部は、くっ付いている。
作りものじゃない。
「あー……。くそ。マジか」
オレは、こういう奴の存在を知っている。
見たまま、少女は人外だ。
こういう人外を世間では、『ケモノ』と呼んでいた。
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