短編

パム

深夜徘徊

服装はジャージ。

帽子を被り、家の鍵と財布をカバンに詰めて肩に掛ける。

そして玄関に向かう。

とても静かでそれがとても嬉しい。

履き慣れた靴を履いて振り返る。

深夜なだけありとても暗くてゾクゾクする。

一言残す。


「行ってきます。」


振り返り、ドアを開けて深夜の外に出る。

近くの階段を降りてマンションの外に出る。

夏が終わり秋が来た。

そのため少しヒンヤリとした空気だ。

目的を持たな深夜徘徊の始まりだ。


道路に沿って少し歩く。

しばらくすると交差点が見えてきた。

深夜だと言うのに車が結構走っていて凄いなぁと感心をする。

そして再び足を動かす。

いつも見る景色とは違い街路灯が明るく夜の良さがよく分かる。


少し歩くとコンビニが見えた。

よく24時間も営業できるなと感心をする。

そして再び足を動かす。


近くの草むらからはコオロギの鳴き声が聞こえてきて季節を感じる。

少し疲れたので近くのベンチで足を休める。


深夜の景色は一味違う。

日中とは違い皆一人や二人といった少人数だ。

車の数も減り静かだ。

表通りは時間が少し経過するだけで大きく変化する。


疲れが取れたので立ち上がり再び足を動かす。


深夜徘徊の良いところは静かなところだ。

日中みたいに人が多くないから周りを気にしなくていい。

そして街の変化もまた一つの魅力だ。

太陽に照らされ光を反射していたビルのガラスは近くのビルを写していたり、電気がついておらず人がいないということがわかる。

他にも良いところはあるがそれはまた別の機会に。


少し喉が渇いてきたので自販機を探す。


少し歩くと自販機が2台並んでいた。

日中は人の目を気にして定番や安定択を取るのだが人が少ないと大いに悩める。

こっちがやすい。

しかしこっちは量がある。

どちらにするか…


少し悩んだ末に140円のお茶を買った。

600ml入りという自販機で売ってる飲み物の中で多めとされる量が入っている。


お茶を飲みながらそういえばと思うことが。

深夜帯の自販機の明かりも魅力だと思う。

日中は自販機の側面の色や、形が目立つがこの時間になるとそんなのはどうでも良くなる。

どちらかといえば自販機のドリンクが並んでいるところからの光が存在感を出している。

ここに自販機があるぞと言わんばかりの光がありよく目立つ。


そして俺はどこに行くかを悩む。

基本的に深夜徘徊というものはノリと勢いでしているため、目的地がない。


しばらく考えて今日は繁華街に行くことにした。


幸い自分の住んでいる場所は中途半端な場所で近くに海があり、近くに山があり、近くに繁華街がある。

そんな少し中途半端な場所だった。

しかし、そこまで近いわけではなく電車やバスなどの公共交通機関で行くことが前提のような場所だった。


近くのバス停まで歩く。

時刻表を見ると次のバスは40分後のようだ。

公共交通機関経由を前提とすると少し時間がかかる。

しかし、今は深夜ということに気づく。

そうだ、深夜。

今の俺には焦る理由がない。

だから俺は、脱水症にならないように少しずつお茶を飲みながらバスを待った。


しばらくすると繁華街行のバスが着く。

今日は繁華街行きにしてよかったと思う。

海や山行きだともう数十分は待たないといけないからだ。


深夜のバスも面白かったりする。

基本的に人が乗ってくることはないのだが、この時間帯に乗ってくる人はたまにいる。

走行しているとバスが停まった。

どうやら人がいるらしい。

珍しく思い入口を見るとなかなかに闇が深そうな人が来た。

俺みたいな適当な服装ではなく、コートを着てしっかりとした荷物を持つ人だ。

ああいった人は家出や別れ、自棄になった類の人だ。

深夜徘徊をしていると色んな人を見るので何となく分かる。

ああいったたぐいの人には話は通じない。

心のなにかが破綻して自分といった存在があやふやだからだ。

しかし…


「お隣失礼します。

……話を聞いてもらえますか?」


話しかけられれば話は別だ。


「いいですよ。」

「初めまして。私は美波と申します。

つい先程、夫が不倫していたことが分かり家を出てきたところです。

これからどうすればいいと思いますか?」


……ありふれた話だ。

ここら辺は繁華街が近くにありマンションや、一軒家などの住宅街もあるのでこういった人は稀に会うことがある。

だから、どういった返し、反応をすればいいなどは、慣れてくる。


「…そうですか。

あなたはどうしたいですか?」

「…わかりません。」

「わかりませんと言われましても…

私はたしかにあなたの質問に答えることは可能です。

しかし、1番大事なのはあなたの意志です。

あなたの方向性がない以上私は無責任なことは言えません。」

「………はい。」


彼女は少し黙ってしまった。

こういったところで黙る人は勢いで家を出てきているので、まずは落ち着いてもらうしか無い。

一見落ち着いてるように見えても彼女の頭の中はおそらく、浮気したあの人なんて知らない!!

といった思考でいっぱいだと思う。

そのため一旦落ち着いてもらい理性的な思考をして貰う必要がある。


しばらくすると彼女は


「落ち着きました。

もう少し自分で考えてみます。」


そう行って隣の席を立ってバスの前方に向かい前方の席に座った。

こういった人はだいたい落ち着くと自分の行動を振り返りそれに恥じらいを覚えて前方の席やさらに後方の席に向かう。


そんなこんなしていると繁華街についたので俺はバスを降りた。


日中の繁華街とは違い人通りは少なく明るさも減っている。

しかし、さすが繁華街と言うべきだろうか。

深夜帯というのに明るさがひときわ目立つ。

俺はただ歩く。

この静かさが好きだから。

このクラスが好きだから。

この…

その時鞄の中の携帯のアラームが鳴る。

どうやら時間のようだ。

次回はもう少し早く家を出る必要があるな。

そして俺は来た道をたどる。

バスは意外と早い時間に次が来るらしい。

バスターミナルで20分ぐらいだろうか。それぐらい待ってると自宅付近行のバスが来た。

俺はそれに乗る。


バスの中は行きと変わらずガラリとしている。

そしてしばらくするとバス停に着いた。


そこから少し歩くと見慣れたマンションが見えてくる。

俺は階段の扉を開けて階段を上る。

そして自分の住んでる階につくと廊下を歩き玄関扉前まで戻ってきた。


形態を見るともうすぐ4時だ。

俺は幸いなことにショートスリーパーなため3時間寝ることが出来れば最高だ。

そして玄関扉を開くとそこには行きと変わらぬ家の様子が。


そして扉は閉まる。

そして表の日常に戻っていくのだった。

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短編 パム @pamutto

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