第6話 スカウト

 オレ、デュー、ガロウ……つまりタカポン以外はアールファンタジアオンラインとは別のゲームも並行してプレイしている。つまり、アールファンタジアオンラインに割ける時間が限られているのだ。

 のだが、この面子での新人で、アールファンタジアオンラインの自称初心者でもあるタカポンは毎日が楽しいらしく、文字通り毎日ログインしている。

 他のゲームや、或いは動画配信サイトを閲覧している最中にボイチャへのお誘いメッセージが届くことに最初は戸惑ったが、三日ほどして慣れた。人間、何にでも適応するものだ。

 それはともかく、楽しんでいて、そしてゲーム仲間を求めているタカポン、実に健全で健康的なエンジョイの仕方じゃあないか、羨ましい限りだ。

 これを書いているのは年の瀬なのだが、皆、割と時間に余裕がありそうだ、とは昨日の雑談から。年末年始をアールファンタジアオンラインで過ごすと言うのも……それはどうだろう。

 タカポンは実家暮らしらしいが、他はオレを含めて一人暮らし。

 正月くらいはオンライン上ででも賑やかに過ごすのも悪くはないかもしれないが、年末と年始くらいはゲームを休んでのんびり動画配信サイトのアニメでも眺めていようかな、とはオレの都合。

 幸い、オレはバイトのシフトをカレンダー通りに入れてもらえたので早速明日から休みだが、確かデューは正月返上で仕事だと言っていた。

 ガロウも同じく。

 タカポンの都合はまだ聞いていないので今日にでもだ。


 そんなタカポンがどれだけエンジョイしているかというと、遡ること昨日の晩。

 皆で雑魚相手に連戦を繰り返していた際、他のチームのプレイヤーと遭遇し、それに紛れるように無所属のプレイヤーがいた。

 と、乱戦中にタカポンが急に動かなくなり、何事かと思うと、ボイチャにて、

「マスター。入団希望者です」

 ……いや、それは大歓迎だが、今は戦闘中なのだが?

 で、雑魚を蹴散らして辺りが静まってから改めて挨拶をしてみると、

「残念、この人、もうチーム決まってるみたいです」

 というオチ。

 まあ正直、タカポンの入団への対応(チーム方針の説明、自己紹介、メンバー紹介など)で手一杯だったので、このタイミングでもう一人追加は辛いから良かったのだが。

 そんな具合にタカポンは、忙しい戦闘中にでも仲間をスカウトしようとする貪欲さを持った、アールファンタジアオンラインを満喫している一人なのだ。

 もうきみがマスターをやればいい、とは言わないけれども。

 ちなみにオレはバージョンアップしてからのアールファンタジアオンラインでは、スカウト活動は一切やっていない。理由はオレが弱くて無知だからチームメイトを引っ張る自信がないから。

 タカポンは置いておき、デュー、ガロウは旧バージョンからの付き合いだからこそ今でもコミュニケーションが取れるし、どうにか一緒にプレイも出来ているが、置いていたタカポンがこの輪にすんなり入れたのはかなりの奇跡だと思っている。

 さすがはガロウがスカウトしてきた人材だ、とここは素直に称賛しておこう。

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