社畜騎兵グレイヴ・ウォーカー
陰猫(改)
第1話
残業して終電を逃し、会社の休憩室の寝袋で寝ていたら誰もが、こんな世界を一度は否定するだろう。
私は既に同じ事を十回以上繰り返してからは考えるのをやめた。
そんな私のささやかな楽しみは数少ない休日にプレイするゲーセンでやる本格ロボット対戦であろうか。
実際にコクピットに入っているような疑似体験と慣れ親しんだ操作性能に身体が既に馴染んでいる。
そんな私の分岐は労働基準法取り締まりで会社が数多くの違法行為を繰り返し、倒産した事に始まる。
ぶっちゃけ、会社がなくなるのは困る。有休の買い取りもないの違法行為になってしまったので今後の就職活動も不安だ。
AIやロボットの登場でほとんどの仕事は機械で行われる。
つまり、金銭のやり取りがし辛いのだ。
有休の買い取りもなければ、サービス残業もない未知の世界を想像するとかなり不安に感じるものがあるし、AIの見落としやロボットの誤作動によるミスがないかなども気にはなる。
はてさて、こんな私に次のチャンスなど巡って来るのであろうか?
失業手当てを貰いながらハローワークへ通い、次の職業を探すもなかなかに見付からない。
来るのはお祈りメールばかりであり、次第に弱気になって行く。
このままではまずいと感じ、私は生活相談所に紹介して貰う。それでは適性検査をとなった訳だが、これから導き出された結果がまた私の分岐となった。
それから数日して私は新たな会社の面接を受ける事になる。
それが軍事産業で活躍するロボットの試作機のテストパイロットであった。
最初は疑問に思ったが、いつもの飛込み営業の勢いで面接した結果、私は合格したので考えるのをやめた。
軍事産業のパイロットは肉体も精神も酷使する常人にはとても出来ない仕事だと説明があったが、そう言った仕事内容の方が不安が少なく済みそうで助かる。
軍事演習で朝4時に起床らしいが、深夜2時には起床している私にとっては余裕だった。
銃の整備や荷物の整備、ランニングなどパイロットに必要な事はさせられたが、日頃から飛込み営業などやプログラムなどで鍛えた私にとっては余裕があった。おまけに昼間には一時間の休憩が貰える。
携帯食で済ませれば、55分もゆっくり出来る。
その間に次の資料作りや整備点検も出来るので有難い。
こうして、私は新たな天職を見付け、これで食って行く事を決意するのであった。
そして、更に数ヶ月が経ち、クレイウォーカーと呼ばれる人型機動兵器が完成する。
肉眼で視認し、パイロットの安全性をかなぐり捨てた装甲だが、解りやすくて私としては大変有難い。
いざ、実践となったが、操作性能はゲーム感覚で行える。
今回はペイント弾によるテストだったが、スラスター出力と言い、操作性能と言い、量産試作機としては最適な機体と言える。
しかし、何故か上層部は困惑していた。
何か問題でもあったのだろうか?
───
──
─
「わが社の最新式クレイウォーカーKz-01が旧式のクレイウォーカーHh063に劣るとはどう言う事だね?」
「申し訳ありません。恐らく、パイロットの技量に問題があったかと」
「馬鹿な。Kzには現役軍人が乗っていたであろう・・・それを旧式のクレイウォーカーで倒したのか?」
上層部が騒ぐ中、クレイウォーカーの発案者は考え込む。
「もしや、テストパイロットの方が特殊なのやも知れませぬ」
「PPPか・・・眉唾であったが認めざる終えぬな」
そんな会話をして上層部は旧式のクレイウォーカーのテストパイロットである早河仁の書類に判子を押す。
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