第三十九話 カンストへと至る道



 高難易度ダンジョン地下九階。


 流石にこの辺りの魔物になると三色持ち程度の冒険者の手には余るので、ここを狩り場にする冒険者なんていない。


 四色持ちだったら勝てると思うけど、俺が使ってきたポーターが使えないといざって時に逃げられないので、こことは逆の位置にあるポーター周辺を狩り場にしているだろうしね。


 このポーターの周囲で狩りをするのは割と迷惑行為になるのであまりお勧めできない。此処みたいに他の冒険者が絶対に来ないって条件でないと嫌われるからやっちゃだめだぞ。


「ダンジョン内は無法地帯だけど、それでもマナーというか避けるべき行為は多いんだよな。ダンジョン内でのバーベキューなんかもそうだけどさ」


 泊まり込みでダンジョンの攻略なんてしてると、そのうちキャンプ感覚でバーベキューとか花火とかキャンプファイヤーとか始める冒険者がいるんだよ。


 こういった行為で手に入るスキルもあるし、絶対にダメって訳じゃないけどさ。それに、キャンプ場として利用できるダンジョンがあるのも確かだし。


 この辺りの迷惑行為は配信してる若い冒険者に特に多くて、近年では浅めのダンジョンだとキャンプ禁止のダンジョンまである始末だ。


 ただダンジョンの管理者がキャンプを禁止しても冒険者たちに、攻略してますが何か? とか言われると追い出せないのも事実だけどさ。


 ダンジョンの攻略は遊びじゃないけど、モチベの維持の為に羽目を外す行為はある程度は目を瞑られてるしね。


「さて、魔法の試し撃ちはこの辺りでいいかな? この階に冒険者の気配は無いな」


 気配察知でこの階に誰もいないことを確認する。


 はっきり言って、今の俺の魔法ってどこまで範囲が広がるか分かったもんじゃないからね。


「あの岩を標的にしてっと、ファイアバレット」


 俺の指先から放たれた小さな炎の弾。


 それが百メートル先に岩に命中し、そして次の瞬間半径百メートルほどの範囲を完全い焼き尽くした!!


 というか消費魔力一のファイアバレットでこの威力。ホント、馬鹿げてるよな。


「俺自身にはバックファイヤーでダメージは来ないけど、周りに仲間がいた時は先に無効化系の魔法を使わないと駄目だ」


 こんな攻撃に巻き込んだら確実に死ぬ。


 というか、普通の冒険者だったらおまけの熱風に晒されただけで余裕で死ねる。


「さて次は本命、威力最大ファイアバレットだ」


 魔力量を少し増やしただけでいいかなと思ったけど、最低レベルの魔法での最大火力をみておきたい。


 メキドを使った方が早い気はするけど、ファイアバレットの方が分かりやすいだろう。


 ただし今回はバフは無し、百倍の威力を確認するだけでいい。


 ファイナルアタックとかを掛けたら千倍を軽く超えるからな。


「よし、今出来たクレーターの真ん中を標的にして……、ファイアバレット」


 それは小さな炎の弾だった。それがクレーターの真ん中に命中した瞬間、炎の舌がクレーターを綺麗に舐めあげてそのまま天井まで焼き尽くし、そして天井沿いにこの階の端から端まで奇麗に焼き尽くす。


 地面や天井は溶けてガラス化し、この階にいた魔物は一匹残らず炎に飲まれて蒸発した。 


【レベルが上がりました】


【レベルが上限に達しました。レベルリセットを提案します】


 ……え? ああ、この階にいた魔物を狩り尽くしたから流石に大量の経験値が入ったのか!!


 あと、入手経験値の増加と必要経験値の緩和も多分手伝ってるな。


 でなけりゃ流石にこのレベルの十レベル分の経験値なんて無理ゲーだし。


「入手ステータスポイント、千三百四十七万五千八百四十か……。もう現実離れしすぎて突っ込む気にもならないな」


 十色だと基本サイコロの数は五百十二の筈だけど、十色になったボーナスでサイコロの数は更に倍。


 それでこんな数値になった訳だ。


 とりあえず全ステータスを最大まで振ってみたけど、馬鹿みたいに余ったな。


 余ったポイントは四百二十二万九千三百六十二。余った方が多い位だ。


【ステータスが覚醒上限に達しました。覚醒の限界を突破して【神域】に突入します】


 神域? 調べてみたらステータス上限が四十二億九千四百九十六万七千二百九十五になってる……。


 という事はFFFFFFFFか!! おそらくこれが最大値で流石にこれ以上は上がらないと思うけど……。


 っていうか、普通の人の最大値二百五十六だよ?


 とりあえず最初のレベルリセット。レベル一なのに完全に現実離れした数値だね。覚醒の時から人間やめてる数値だったけど、もう人かどうか怪しいレベルだぜ。


 生命力も魔力も七桁だよ? 魔法と通常攻撃に最低でも六万五千五百三十五の補正が入るのが超凶悪……。最初の実験の五倍近い威力になるのか……。



◆◆◆


 【名前】 神崎かんざき眩耀げんよう


 【性別】 男


 【種族】 人間


 【レベル】一


 【クラス】ヒーロー(冒険者)


 生命力 四百四十二万五千九百六十七/四百四十二万五千九百六十七


 魔力 四百四十二万五千九百六十七/四百四十二万五千九百六十七


 筋力 六万五千五百三十五


 氣力 六万五千五百三十五


 知力 六万五千五百三十五


 賢力 六万五千五百三十五


 速力 六万五千五百三十五


 運  四百二十九万四千八百九十七


【次のレベルまでの必要経験値】一


【残りレベルリセット回数 二】


◆◆◆



 とりあえずこんな感じにしてみた。


 先に運をカンストさせて、ステータスボーナスを稼ぐ作戦だ。


 次のレベルまでの必要経験値が一なのは、おそらく十分の一になるスキルが複数存在するからだろう。全部重複可になってたしな。


 それと残りレベルリセット回数ってのが表示されるようになった。


 つまり後三回カンストさせたら終わりって事か? レベルリセット回数が増えるアイテムとかあるのかもしれないけど。


「ダンジョンリングじゃない方のインベントリに馬鹿みたいにアイテムが詰め込まれてるな。これ全部この階の魔物倒して得た魔石とかアイテムなのか?」


 ドロップアイテムの自動収集とかそんな感じの機能のお陰だな、これは。


 さっすがにこの地下九階に存在した全魔物分のドロップアイテムとなると多すぎてひとつずつ見てる暇は無いか。


 暇がある時に整理するしかないな。


◇◇◇


 現在高難易度ダンジョンの地下七階で~す。


 やっちまった、思わずやっちまったよ。


 ダンジョン地下八階と七階に転移した時点で他の冒険者の気配がなかったというか、こんな週初めに高難易度のダンジョンを攻略してるガチ勢なんている訳も無く、普通に攻略するのが面倒だったからほんの出来心でメキドとライトニングストームを使ってみたんだ。


 結果、ダンジョン八階は九階とほぼ同じ様な惨状に見舞われ、今いる地下七階は無数の雷に焼き払われて原形をとどめていない。


 どっちも魔物の気配を完全に感じなくなったから、その階にいる魔物を一匹残らず駆逐したって事でいいんだろう。


 インベントリ内にあるアイテムも、もう数える気にならない様な規模だしな。結構な数でレア素材なんかも混ざってる。金銀財宝もザックザクだよ~。


「とはいえ、おかげで能力値は異常な状態だね」


 経験値のボーナスと軽減の効果で、その階にいる全魔物を倒したら当然の様にレベルがカンストした。リセットしているとはいえ、レベル一になってるんだから当然っちゃ当然か。


 二回目のカンスト分のスキルポイントは運のステータスに全振り。そのおかげで運のステータスは十四億四千百五万千二百六にまで達した。


 そして問題の三回目のカンスト。ステータスボーナスの合計は一兆四千四百六十一億二千四百万千二百八十。


 運のステータスを優先してあげるという俺の策が功を奏し、全ステータスを四十二億九千四百九十六万七千二百九十五まで上げても必要なポイントの合計は二百五十七億六千五百十八万千百九十九しかない。


 その結果、一兆四千二百三億五千八百八十二万八十一という莫大なステータスポイントが降りきれずに残ってしまった。


 ステータスはこんな感じだ。


◆◆◆


 【名前】 神崎かんざき眩耀げんよう


 【性別】 男


 【種族】 人間


 【レベル】一


 【クラス】ヒーロー(冒険者)


 生命力 百二十八億八千四百九十万千八百八十五/百二十八億八千四百九十万千八百八十五


 魔力 百二十八億八千四百九十万千八百八十五/百二十八億八千四百九十万千八百八十五


 筋力 四十二億九千四百九十六万七千二百九十五


 氣力 四十二億九千四百九十六万七千二百九十五


 知力 四十二億九千四百九十六万七千二百九十五


 賢力 四十二億九千四百九十六万七千二百九十五


 速力 四十二億九千四百九十六万七千二百九十五


 運  四十二億九千四百九十六万七千二百九十五


【次のレベルまでの必要経験値】一


【残りレベルリセット回数 無】


◆◆◆



 やった~全ステータスカンストだね。更にもう一回カンストするとどれだけステータスポイントが余るか想像も出来ない。


 って、残った一兆四千二百三億五千八百八十二万八十一ポイントってどうするんだよ!! 今まで振り分けたポイントよりはるかに多いんですけど!!


 スキルポイントの方はというとこっちの残は二十万七百九十ポイントで、これだけ見るとまともな数値に見えるかもしれないけどこれも異常な数値だ。


 追加スキルのレベルを二千七レベル上げられるだけのポイントだしね。


【条件を満たしましたので、ステータスボーナスポイントとスキルポイントの交換が可能になります】


【条件を満たしましたので、スキルポイントと交換にスキルの取得が可能になりました】


 これでスキルを取り放題だし、ステータスポイントをスキルポイントとして使用できるんだったら数千億ポイント分スキルが取得できるんだけど……。


 後で調べていろんなスキルを習得してみるか? 既にステータスが高すぎてなにとってもほとんど意味ない気はするけどさ。


【ステータスの余剰ポイントを生命力や魔力に振り分ける事が可能です】


 ……十一桁ある生命力や魔力をこれ以上増やすの?


 仮に残ったポイントを生命力に全部突っ込むと、一兆を超える生命力を持った冒険者が誕生するんだぜ。


 半分ずつでも怖い数値だ。


 生命力 五千百二十八億八千四百九十万千八百八十五/五千百二十八億八千四百九十万千八百八十五


 魔力 五千百二十八億八千四百九十万千八百八十五/五千百二十八億八千四百九十万千八百八十五


 とりあえず五千億ずつ生命力と魔力を増やして、ポイントの残はステ―タスポイントが四千二百三億五千八百八十二万八十一、スキルポイントが二十万七百九十になった。


 今後入手した分に関しては貯めておくしかないか。どこかのポイントみたいに期限切れって事にはならないだろうし。


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