最凶不遇と呼ばれる灰色カードのステータスカード持ち冒険者が真のヒーローに至るまで~

朝倉牧師

第一章 冒険者始めました!! ステータスカード発行編

第一話 ダンジョン


 ダンジョン。それは四十年ほど前、世界中にひょっこりと姿を現した謎の空間。


 その内部にはファンタジー物の小説や映画などで見かけるような様々な魔物が蠢き、そしてダンジョン内でしか入手できない様々なお宝が存在する夢の様な場所でもある。


 その為にダンジョンが発見された当初は即座に封鎖されたり国が管理したりと大層な扱いだったんだけど、十年程経ったある日突然急に何の前触れも無く世界中のダンジョンが開放された。


 しかもその時解放されたダンジョンはひとつやふたつじゃない。世界中にあるダンジョンを一つ残らず全部だ……。隠されてるダンジョンや未発見のダンジョンもあるかもしれないけど、存在が公表されているダンジョンはすべて完全解放されたってことだね。


 その辺りの事は俺も生まれる前なんで詳しくは知らないけどさ。


 ダンジョンの出現で世界的な変化があったとしたら、電気の衰退と魔石システムの台頭もあるかもしれない。


 ダンジョン周辺では魔素に阻害されて様々なエネルギーの効率が落ちる。昔からある乾電池式の懐中電灯なんて使ったら、全然明るくならないのにあっという間に電池は空になる。


 携帯電話などで使う電波や電磁波も当然衰退するので、その代わりに魔力波や魔力通信システムなどが開発された。


 世にあふれていた電化製品の代わりにダンジョンで入手可能な魔石を使った魔道家電商品が真価を発揮し、性能面で圧倒する魔道家電を扱う専門店も増えている。というか大手家電量販店がそのまま魔道家電を売ってるのが現状だね。


 魔道家電商品を使った方が電気代がかからないからかなりお得なんだそうだ。懐中電灯なんかも今では魔石式の携帯型魔導灯を使うし。工業用の大型機械なども今は魔道式の機械を導入しているところが多い。


 魔石から抽出できる魔力を電力代わりにして作動させる魔道家電商品はこの二十年程でもうかなり普及してるし、おかげで電気なんて過去のエネルギーと化そうとしてる。


 この辺はガス灯から電気に変わったのと同じなのかな?


 話はダンジョンに戻るけど、ダンジョンには決まりというか法則がある。


 何処のダンジョンにも一階には魔物などが一切存在せず、また床なども割と平らであまり複雑な造りもしていない。


 そしていくつかの部屋と共に冒険者として絶対に必要なステータスカードの発行に必要な設備などが何故か最初から全部揃っている。その為に何処のダンジョンの一階はダンジョン協会の出張所となっているんだよね。


 また、俺の通う私立深淵学院もそうだけど近年ではダンジョンを踏破する冒険者を育成する学校なども増えて来てて、高レベルなダンジョンを攻略した者にはそれ相応の敬意が払われるし就職なども有利になるそうだ。


 私立深淵学院では入学時に全生徒が私立深淵学院が管理するダンジョンでステータスカードの発行を行う。


 誰でも十五歳からステータスカードの登録ができるし、ある程度資産のある家の子供なんかは安全でレベルの低いダンジョンでもっと幼いうちにステータスカードを発行したりするけど、普通の生徒はこうして学院に入ってからステータスカードを作るのが普通だ。


 ただし、誰でもステータスカードを発行できるけど、誰でも冒険者になれるってのは違ったりする。


 実際には最低条件がクリアできなかったって理由でカードの生成に失敗してステータスカードの発行が出来ない人もいるからね。この学院に入学してる生徒は全員簡単な予備検査でカードが発行できることは確認されてるから安心だ。


 今日はそのステータスカードの発行日なので、俺達は初心者用ダンジョン近くにある空き地で順番が来るのを待っている。どうせだったら初心者用ダンジョンの中で待たせてくれりゃいいのに。うちの学校が管理するダンジョンでも内で騒がれると迷惑なんだとよ。


 というか、何代か前の先輩方が派手にやらかしてくれたおかげで、それ以降の生徒はこうしてこの辺りで待たされるようになったって話だ。


 今日は晴れてるからいいけど、雨の日は大変だぞ!!


 俺たちもただ待たされてる訳じゃなく、ここには四組の奴らもいるからパーティに誘ったりと今後の事で色々話はあるけどな。


「お、二組の奴らが呼びに来たな。そろそろ行こうぜ」


「や~っと二組が終わったか。神崎かんざき、もし二色以上だったらパーティ組まないか?」


「いいけど。二色以上ってのが引っかかるな」


「いや、白単とか黒単でもいいんだよ、要はバランスだし。それでも流石に他の単色は勘弁だぜ」


 小谷野おやのの奴とは中学の頃からの付き合いだが、昔っからこんな面はあったよな。


 こいつは俺がほかの色の単色だった時は容赦無く他の奴とパーティを組むつもりだろう。


 ソロ冒険者もいるって話だけど、最初からソロはかなりキツイって話だ。出来れば白混じりの回復担当がいてくれるとありがたいんだけど。


神崎かんざきは昔から妙に運がいいし、四色持ちとかだったりして」


「まっさか~。その時は俺をよろしくな」


 四色持ちとかあこがれるけど、必要経験値が増えるからその分レベルアップがきついって話だぜ。


 その上の五色なんて夢のまた夢だしな。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る