異説・白雪姫

東雲

第1話

 むかしむかしのお話。


 あるお国にお妃様がいらっしゃいました。

 線の細い、繊細で儚げな美しいお妃様。


 しかし、お妃様は身体が弱く、今お腹にいる赤ちゃんを生んでは死んでしまうのではないかと言われています。


 けれど、お妃様はやっと出来た大切な赤ちゃんだと言って生む事を決めていました。


「嗚呼、可愛らしい私の赤ちゃん。雪のように白い肌、黒檀のような黒髪、そして……何よりも鮮やかな赤い血の唇を持った美しい子に生まれておいでなさい」


 お妃様はそうおまじないのように繰り返し、祈りました。


 そうして、全てを奪う雪の日。

 お妃様は難産ながらに可愛らしいお姫様を生みました。


「ああ!息をしておりませぬ!」

「お妃様!しっかりなさいませ!お妃様!」


 生まれて直ぐに息をしないお姫様。

 難産に体力を奪われたお妃様。


 お妃様は残念ながら亡くなられてしまいました。

 しかし、お姫様はお妃様が亡くなられてすぐに、まるで命を引き継ぐように息をしました。

 そして……


「おぎゃあ!おぎゃあ!」


 元気な産声を上げました。

 侍女たちは皆喜びました。

 王様はお妃様の忘れ形見に泣きながら喜びました。

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