翠雨に映る記憶。
liol
関係性の解釈不一致
ホームの反対側の列車のドアの閉まる音が聞こえ、彼が離れていくのを見送った夜を思い出す。ホームの上のトタン屋根に雨が当たって響いている。あれは思っていたよりもずっと呆気のない終わりだった。執着してほしかったわけでもないが、正解に連れて行ってほしかったとは思う。電車の音が遠く離れてすぐに、自分の乗る電車がやってくる。
電車に乗ってしばらく揺られ、最寄り駅から出た。雨が染み込んで乾ききらないアスファルトを中々変わらない赤信号が飾っている。私は悴んだ手に白い息を吹きかけた。耳に差し込んだサブスクリプションの自動再生が、彼が好きだった歌を流すものだから涙が出そうになる。少しづつ彼の顔や声は曖昧になっていくというのに、好きだった歌は鮮明に覚えている自分に嫌気が差す。信号が変わるのがいつもより少し遅く感じた。
「関係性の、解釈不一致。」横断歩道を渡りながら、あの時の彼を想って浮かんだ言葉を反芻してみる。それはとてもよく二人を表していた。
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