生命刑課
瑠々
プロローグ【地獄の始まり】
ここは『古来渡帝国(こらいどていこく)』の首都『東樹(とうき)』。帝国の父である皇帝の川岸大志(たいし)は悩んでいた。理由は2つあり、1つ目は古来渡帝国の周囲の国、『漢来風帝国(かんらいふうていこく)』と『マクドル王国』、『スリーダム王国』、『クリーラ・ベイ王国』の4つの大国による圧力に対する解決策について、2つ目は自国のテロ組織集団『赤羽教団』による悪行の数々に対する悩みを抱えていた。赤羽教団は非合法の宗教団体で、活動許可を国に申請したが、書類に記入されていた活動内容に危険性を感じた大志は活動許可を出せなかった。しかし、この出来事に激怒した教団の教祖である赤羽四久(あかばねしく)は古来渡帝国を滅ぼし、自分こそが帝国の父となるべきだと思っている者、大志に不満の感情を抱いている者を集め、非合法のテロ組織を生み出した。
大志は2つの問題に対する解決策の1つとして、皇帝直属の秘密部隊を作りたいと思っていた。しかし、今の帝国には人材も少なく、大国の部隊やテロ組織勝る戦闘能力がないため何もできずにいた。
ここは、北に位置し、帝国一の寒帯地方の北華(ほっか)。ここには赤羽教団の拠点の1つが存在する。この拠点には教団の要である研究所が設置されている。そのため、最も実験体が多く、最も残酷な場所である。実験体の多くは様々な地域で誘拐してきた人たちのため、北華にある拠点が一番人の出入りが多く、死体も多く存在する。北華の他に、西に位置する西嵐(せいらん)と南に位置する南魁(なんかい)にも拠点があるが、この2は実験体となる人材を教育と称して監禁し、拷問する施設となっている。しかし、首都である東樹には拠点がない。なぜなら、東樹には大志や重臣達の出入りが多いため、捕まるのを恐れているからだ。
話は少し戻り、北華の拠点では、赤羽の最終目的である“怪物を生み出し、スリーダムとの協力関係を結ぶ道具にし、古来渡帝国を滅ぼす”ことに重要不可欠な6人の人材が監禁と拷問の日々を送っていた。
未華榊(みばなさかき)。
彼は幼い頃から両親の虐待を受けて育ってきた。
俺はそんな状況から解放されたい一心で寮付きの高校へと入学した。学費などの金銭的な問題は役所が借金という形で支払いを待ってくれてるため、問題なく穏やかな高校生活を送れていた。しかし、ある日突然警察から電話がかかってきた。内容は「突然の連絡失礼します。今、君の両親の死体が発見されたため電話させていただきました。」というものだった。正直、俺は何とも思わなかった。自分の事を散々痛めつけてきた人達がどうなろうが心底どうでもよかった。でも、死ぬならせめて謝罪の1つぐらいでもしてほしかった。俺は何の感情もこもっていない声で「はぁ、。」と返した。すると次の瞬間、警察から驚くことを言われた。警察が言うには、俺の両親は何者かの手によって殺されたらしい。というのも、両親の死体はバラバラにされ、袋に詰められた状態で見つかったらしい。それを聞いた俺はバラバラ死体にではなく殺されたことに驚いていた。なぜなら、俺の両親は外面はだけはよく、誰かの恨みを買うような人には思えないからだ。警察から電話がきた後、事情聴取や書類への記入などで警察署に行っていた。全ての用事が終わり、寮に帰る途中、俺は何者かの手にとって気絶させられ、そのまま誘拐されてしまった。
目が覚めると、学校で言うと体育館程の大きさのある部屋だった。しかし、まるで監獄のように薄暗く、不気味な雰囲気を漂わせていた。目を凝らして辺りを見ると、5人の男女がそこにいた。
黒崎暗(くろさきあん)。
彼女は存在価値を否定されながら育ってきた。
彼女は幼い時に両親を事故で亡くし、児童養護施設で暮らしていた。そんなある日、先生が私に向かって「病気のあなたを引き受けた恩を返してもらいます。」と言い、私の頭めがけて鉄バットを思いっ切り振り下ろしてきた。私はすぐに気を失い、その場に倒れた。私が6歳の時に両親を事故で亡くした。私は心臓の持病を持って産まれたため、両親の死後、私は養護施設で暮らすことになった。しかし、私を引き取ってくれた施設は、無理矢理押し付けられ、しかたなく引き取ったため、正直面倒だと思っていたらしい。そして私が成長するにつれてかかる費用も倍になっていき、そのことに腹を立て、私が中学に上がるころには先生達やルームメイト、学校のクラスメイトから、いじめや虐待を受けていた。そんな私の状況を心配した教師が、私が元々通っている病院の精神科に連絡し、中学3年生の冬、私は精神科へ入院した。医師や看護師の皆さんに助けてもらい、何とか関係を修復し施設へと帰ることができたのは、入院から約半年後の高校1年生の夏だった。そして、話は冒頭部分まで遡り、頭を殴られ気を失った私は、目が覚め、監獄のような場所にいた。最初は薄暗く、よく見えなかったけれど、見えた景色は私の他に、恐らく私と同じ状況であろう男性が5人、そこにいた。
小三拓矢(おみたくや)。
彼はとても聡明だった。・・・不幸なほどに・・・。
僕は賢い。自他共に認める程に。僕はナルシストじゃない。僕の両親は可もなく不可もない、実に模範的な親だ。僕は親のように普通に生きるのが嫌だった。今思えば一種の反抗だったのだろう。しかし、その反抗のおかげで高校1年生の時点で僕のIQは190と言われるほどになっていた。そんな僕は入学してすぐクラスメイトや教師、生徒会の皆さんの推薦で生徒会長に就任した。生徒会の仕事は僕が思っていた以上に忙しかった。というのも、僕が賢いという理由だけで生徒会の全ての仕事が僕に任されたため、僕だけが忙しい毎日を送っていた。そんなある日、突然学校に不審者が現れた。生徒も教師もこの状況に戸惑い周りはパニックに陥っていた。かくいう僕も戸惑っていた。すると、突然ある生徒が「た、拓矢ならこの状況を何とかできるんじゃないか?」と言い出した。その一言で僕に不審者の相手をさせるべき、という状況に一変し、生徒会副会長で友達だと思っていた生徒に不審者めがけて体を押された。僕はしかたなく不審者と話をしようとしたのだが、その瞬間催眠スプレーをかけられ気を失いそのまま誘拐されてしまった。この時、誰一人として僕を助けてはくれなかった。目が覚めると、まるで監獄のような場所にいた。また、僕と同じ状況であろう男女が5人、そこにいた。
小山海(こやまかい)。
彼は誰にも期待されず、存在を否定されて育ってきた。
ぼ、僕は誰にも必要とされていないんです。で、でも、僕、もごもご話して、すぐに自分の殻に閉じこもるから、しかたいと思います。でも正直に言うなら、そんな僕でも、両親だけは見捨てずに愛してほしかったです。僕の両親は僕に呆れ、毎月生活費を置いて仕事と称して僕を捨て、海外で暮らしています。そんな僕の唯一の楽しみは、パソコンなどの電子機器を改良したり、プログラミングを作ったりすることです。この日は、新しい機種のパソコンを買いに外に出ていたんです。すると突然後ろから麻酔薬を吸わされ、僕は気絶してしまいました。目が覚めると、薄暗く、気味が悪いそこは、まるで監獄のような場所でした。そして、僕の他に5人の男女がそこにいました。
四輝雷花(しきらいか)。
彼は本当の愛を知らずに育ってきた。
僕は愛されるために生まれてきたの。パパもママもかわいがってくれていた、はずだった。この日はパパとママ西嵐と北華のちょうど真ん中の地点に連れていかれた。僕は不思議に思いパパとママにここに来た理由を聞いてみた。するとパパが「お前にはこれまで十分すぎる程与えてきた。」と言い、続けてママが「だから最後くらい私たち家族の役に立ってちょうだい。」と言ってきた。その瞬間、僕は一度も両親に“愛している”と言われたことがないことに気づいた。僕には2つ年上の兄がいる。兄には厳しく、“あなたのため”だとか、“期待している”、“愛している”などの愛情表現をしていた。けど、僕には“好きにしていい”というだけで、これといった愛情表現をされた覚えが全くない。両親からの冷めたい言葉に戸惑っていると後ろから麻酔薬を吸わされ気絶してしまった。目が覚めると、謎の異臭を放ち、監獄のような場所にいた。そして、僕と同じ状況の男女が5人、そこにいた。
再桜純(さいろうじゅん)。
彼はある意味素直で真っ直ぐな人間に育ったと言えるだろう。
俺は強い。地元の暴走族のリーダーだし、ケンカもめっちゃ強い。俺の親は、俺が小さい時からほったらかしで2人共浮気相手と遊びまくっていた。生活費もろくに渡さず、完全放置だ。そんなおれの面倒を見てくれたのは、地元の暴走族の先輩だった。中学に上がる頃にはすでに暴走族に所属していて、面倒を見てもらった恩返しと称して色んなヤツとケンカしていた。そんなある日、俺は先輩に呼び出され、指定の場所に向かった。その場に着くと、族の中では弱い部類に入る人間が先輩や後輩、全ての人間をボコり、そいつ以外全員倒れていた。戸惑っていると後ろから何者かにバットで頭を殴られ気絶してしまった。目が覚めると、牢屋みたいな所にいた。しかも、俺と同じ状態の男が4人、女が1人いた。
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