欠けた感情を埋める読書
「恋愛系の小説や漫画を読んでみるといい?」
主治医の先生の言葉をきっかけに私は恋愛小説を読むようになった。テレビなどは受動的になるから、能動的な読書がいいと言う。
読書する間、私は自分の世界に浸ることができた。その世界ではいつも自分の『恋愛感情』を見つけることができなかった。
恋愛小説を読んだ冊数は二桁を超える。喜び、悲しみ、怒り、楽しみ、どの感情も読書で味わうことができた。でも、『トキメキ』。それだけは味わうことができずにいた。みんなのおすすめの胸キュン小説を読んでも、全くトキメキを抱くことはできなかった。
恋愛失感症。自分の恋心に気づくことができない障害。私はそれを患っている。自分の大好きだった人と別れて心が傷ついた結果だ。
私の恋心を奪った彼を絶対に許すことはできない。だからどうか、私とよりを戻して。私は本越しに見える机の上の花瓶に強く願った。
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